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理想と現実

自分の代から商売や会社を始めた人間の誰もが痛感しているのが、

【銀行とは新規事業には、なかなかお金を貸してくれない!】

という事・・。
自分の事になるが、この横浜に来る前に、池袋で11年の
実績を持つ・・もちろん威張るわけではないが、胸を張れる
売り上げ&経営状態だった。
しかし池袋の店をやめ、横浜に新規に移店をしようとすると、
なんと銀行はお金を貸してくれないのだ。
池袋での11年の実績をみてくれ!といっても、それは池袋
での話であって、今度の場所で上がる売り上げの確証には
ならないから・・という判断だ。
最終的には、あるウルトラCで借りる事になるのだが、
その位に新規は難しいのだ・・。

それを知っているので、石原都知事が掲げた【新銀行東京】
の構想・・個人的には大賛成だった。
しかし、その【新銀行東京】・・開業からわずか3年で
1016億円の累積赤字(不良債権)、この3月決算を
乗り切る事ができないという。
それに足りないのが、360億円だが、もうちょっと余計に
頂戴ね!という事で、400億円の追加出資を求めているのが、
今色々ニュースで耳にする部分・・。
しかし、最終計画の2011年度までの予想焦げ付きは600億円
近くに達する試算と、ビジネスとしては完全に破綻、大変な
事になってしまっている・・(^-^;

というより、ひどいお粗末な内容に自分などは逆に笑いが
込み上げた(笑)

銀行はバブルがはじけて以来は、

【晴れた日に傘を貸して雨が降ると取り上げる】

という姿だった。そこで、2003年3月当時、中小企業が
銀行の貸し渋り、貸しはがしで、運転資金を引き上げ
られたりして疲弊していた頃に構想され、その対策として、
都知事曰く

【世界に誇りうる日本の中小企業を救う】

という理念のもと、東京都が1000億円を出資、共産党
を除いて全会派賛成で、2005年4月に【新銀行東京】
が開業・・大手銀行が貸し渋っていた、優秀な中小企
やベンチャー企業への

【無担保・無保証】

で融資!というとてもありがたい条件だった。
でも、デメリットとして【無担保・無保証】なので、
大手銀行よりは【ちょっと高い金利】で融資しますよ!
という内容・・それでも新規や中小企業は貸して
もらえるだけありがたい・・。

しかし、【新銀行東京】ひとつ誤算があった。
この【新銀行東京】・・提唱したのは【2003年3月】、
開業は【2005年4月】という

【時間差の落とし穴】

にはまる事になる。実は、この2年間に多くの大手銀行
は不良債権を解消し、経営が健全化してしまったのだ。(笑)
よって、貸し渋っていた大手銀行が、ベンチャー企業
や中小企業の優秀な所には貸すようになってしまった。
しかも、そうなればそもそも大手銀行は【新銀行東京】
よりも安い金利ですから、高い金利の【新銀行東京】
は借り手がいなくなってしまった。
そこで、今回の墜落への第一歩が始まる。
借り手がいなくなってしまった【新銀行東京】は審査
を甘くする事にした。
実際、中小企業は明日の金に困る。
2週間、1ヶ月と審査がかかっていたら大変。
よって、自動審査で3日間で返事を出すという方式で貸し出す。
結果、1年後には20億円の焦げ付き、さらに半期を過ぎると
50億円突破!って・・株じゃないっつの!(爆)●〜* 
2007年上期には80億円を突破し、現在は285億円の融資
が焦げ付いているそうだ・・(^-^;
その割に、実態は中小向け融資は全体の半分強にすぎない
という

【中小企業のための銀行】

というポジションも狂ってきている。

さらに、提携する信用金庫が企業に融資を行う際に【新銀行
東京】が一定の保証料をもらう代わりに、企業が返済できなく
なった場合には、最大80%を肩代わりするという【信用金庫
融資の保証】なんて事もやっていた・・しかし普通に考えて、
信用金庫は【良い案件】であれば自前でやる。(笑)
でもこれはちょっと厳しいかな?と思っても【新銀行東京】
が保証をするなら貸そう!となる。
そうするとどうしても【危ない案件】だけが溜まっていく・・。
結局、現在の焦げ付き285億円のうち、2008年1月までに
【信用金庫融資の保証】での融資の焦げ付きが約560件・
65億円にまでのぼっており、焦げ付き全体の1/4とな・・。
まあ、400億円の追加出資になった場合には、都民も痛み
を我慢するのですから、信用金庫にも泣いてもらって、
都民のためにチャラにしないとな!

と、話が逸れたが、しかし、それでめげないのが
【新銀行東京】(笑)そうなっても、とにかく融資をしよう!

【焦げ付きは融資が増えれば補える!】

という自転車操業をする事にひらめく!(笑)
そこで、書類だけ甘い審査にして、さらに5000万円
限度額いっぱいまで貸そう!という方式をどこにでも
行ったそうだ・・すごい企画である。うちも借りたい(笑)
そして、融資契約をした行員には最大200万円のボーナス
を与えよう!とニンジンぶら下げ作戦で銀行を盛り上げる
事にする。(笑)
しかし、そのボーナスの基準がすごい!その企業が
債務不履行になるか?などは不問で、とにかく貸し
付けたらボーナス!という方式!すると、次の月とかに
バンバン債務不履行が続出する・・(笑)
ありゃりゃりゃ、このままではダメ!という事で、
最低でも6ヶ月以上もつ会社へ貸し付けた人のみに
ボーナスを出す事に変更。
しかし、当然、今度も6ヶ月だけもつ会社へどんどんと
融資する事になる・・(笑)
いやいや、どれだけの素人がやっているの?と
錯覚するかの内容には驚きである・・(^-^;
ちなみに、このダメダメイベントの結果、ボーナスを
もらった行員は延べ174人総額4500万円の大振る舞い!(笑)
そして、この結果、融資先の約13000社のうち、破綻した
融資先は2345社と全体の1/5にあたる・・普通なら
つぶれている。(-_-;)
しかも、書類審査があまりにも甘かったので、詐欺まがい
企業への融資が見つかっているだけで35件・・。
どこをどうみても完全な経営陣の甘さ故の罪は重い・・。

それでは【新銀行東京】・・素人が始めたのか?というと、
当初は違った・・東京都は銀行業務にもちろん素人なので、
金融の専門家にお願いした。
しかし、その金融の専門家の執行役員のうち4人が放漫融資
への批判や疑問から去ってしまった・・それが一番の痛手
だったらしい・・。
という事は、当初の執行役員として金融の専門家がやろう
とした事があったが、何かの圧力で封じられていたという
背景をココから感じるよな。都知事は

【最初から私がやっていれば、もっと大きな銀行にしますよ!】

と語っていたが、それはウソ!知っていただろうなぁ・・と
素人目にも感じる訳です・・どう考えても株主でもありながら
今まで気付かなかった!はないでしょう?(笑)
やはり一番悪いのは経営者、そして東京都&都知事なのだが、
本当に悪い奴は金を返さない奴ですから、ここは勘違いしては
いけない・・みんなちゃんと金を返していれば、こんな事には
ならなかったのですから・・。

と、悪い事ばかり書いているが、反面、約13000社の中で
約7000社の企業が実際には回復していった事実はある。
だからきちんと【新銀行東京】の役割はあった。
ただ、結果、東京都の出資した1000億円は溶けて無くなって
しまったという現実から、同じ1000億円をかけて、何千社
かの企業を救うのに、果たして【銀行という仕組み】が必要
だったのか?本当は【制度融資】で良かったのでは?という
事をふまえて、追加出資するならば考えなくてはいけない
だろうな・・。

【新銀行東京】のこの先の道としては、

●追加出資(400億円・都民1人あたり3180円)
●清算→預金は全額戻ってくる(1000億円以上かかるそうだ)
●破綻→場合によっては債務超過になる預金の全額は戻らない
(金融庁のもとペイオフ)

という3つの道がある。
都曰く、追加出資400億円を投入してくれるならば、
再建計画として、2007年8月には店舗外ATM126台を停止、

【店舗→6カ所、従業員→450人(2008年1月末)
 預金残高→約4000億円】

の所を、

【店舗→1カ所、従業員→120人、預金残高→約200億円】

にし、さらには融資残高を4 年間で6分の1に圧縮する。
しかも、今までの【無担保・無保証】という部分は見直し、
担保を原則求めるという、普通の銀行になる。
これをみると、店舗外のATMが無くなり、1店舗になる訳で、
実際には預金者にとっては、とても使いづらい銀行となる。
しかしそこは、預金者のほとんどが5年定期や3年定期
なのでATMはいらないし、450人中の行員の内、200人
は派遣社員なので問題なし!としているが、なら、こんな
大きな削減計画をする前に、もっと早く細かくやれよ!と
素人目にも感じる訳で・・(笑)で、結局の所、

【できない銀行業務をやっちゃった!ウフっ!】

という風にしか見えないんだよな・・(^-^;
まあ、その前に、年度が変われば間違いなく金融庁が検査
に入るので、そこで不良債権の量などが明確化され、どの
くらい腐っているのか?が全部わかってくるはずだ。
【恐らく2011年度までは持たない】というのが大方の
予想だ・・。

【これ以上、素人に任せるのは危険。損失を確定させて、
 今、退くべき】

というのがほとんどの意見だが、都議会は追加出資の
400億円を認める方向らしい・・証人喚問で都議会に
仁司氏を呼び、石原知事や都と現場のでたらめぶりが、
どのような関係にあったのか、徹底して解明する事が
先だと思うが、3月決算を乗り切る事が先決と言う事か・・。

バブルがはじけて、日本の銀行がダメになった時に、
国民の半分以上が反対していたにも関わらず【公的資金】
を注入した・・そして、日本の銀行は立ち直った。
そこを考えると追加出資も同じ意味を持つのかもしれないが、
【新銀行東京】は素人集団であるという事だけは、その時
と大きく違う・・。

本日3月25日に都議会の予算特別委員会で質疑、27日に
都議会・本会議で採決となる。