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愛を読むひと【ネタバレ注意!】

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随分前に、お客様から紹介されて興味を持って観て、
その後、書いておいたのですが、UPするの忘れて
いました・・(^-^;(笑)

いやいや実は観る前、お客様からプッシュされた
ものの、大きな期待はしていなかった・・(^-^;
映画って、やはりラーメンじゃないが、好き好きが
あるし、自分などは恥ずかしながら【ダイハード】
や【ターミネーター】【24】みたいな

【ババババ!ズドドドド!】

的な、いわゆる【眠くならない】映画が実は一番
好きなものですから・・(^-^;(笑)

しかし、この【愛を読むひと】・・アバターじゃないが、
コンピューターグラフィック全盛の映画が氾濫する昨今、
久々に色々な事を考え、じっくりと展開を楽しむという
どっぷり漬かって、映画に入り込めた素晴らしい作品
でした・・。
ここ最近、この作品を超えている作品があったか?を
振り返ってみると、見当たらないくらいに、個人的
にはここ数年では一番素晴らしい作品でした・・。
(という程、観ていないが・・(爆)●~*)

しかし、主演の女優、前知識無しに観たのですが、
映画を観終わっても【タイタニック】のヒロイン
だった【ケイト・ウィンスレット】とは恥ずかし
ながら、わかりませんでしたよ・・(^-^;
というか、オシャレもしないような女性の役柄で
好演しているというのもあるが、12年の歳月は
重い・・と感じてしまうくらいに年をとって
見える・・(笑)

1958年のドイツの話なのだが、序盤は年上の36歳
の女性・ハンナ(ケイト・ウィンスレット)に恋する
15歳のティーン少年・マイケル(デヴィッド・クロス)
という図式・・大人のお姉さんに優しくされて、
恋愛経験の少ない少年が恋心を抱き、いわゆるSEX
を覚えて、やりたくてやりたくて仕方がない・・
という少年というか男なら誰でも通るだろうと
思われる【猿時代】の話から始まり、

【SEX→学校へ行く→SEX→学校へ行く
 →ちょっと本を読む→SEX】

の繰り返し・・(^-^;(笑)
まるで、映画【個人教授】を地で行くような
展開で、どこが【愛を読むひと】なんだよ・・と
思いましたよ・・(爆)●~*
でも、そうしたやりとりの中でも、自分も歳を
とったせいか、裸のハンナに食われる直前の
マイケルの初々しさ故の

【やばい!食われる!】

というドキドキする表現も、なかなかの体当たり
演技で、う~ん自分もこんな15歳なんて時代に
年上のお姉さんに襲われる感じを体験してみたい!
と下品ながら思っちゃいました!(゚ー゚)\バキ(笑)
ま、それも物語が進んでゆくと、実はSEXを中心の
【禁断の愛】を、描く事が目的ではなく、のちのち
ストーリーの重要な役割を果たす大切な場面で
あった事に後で気付く・・。

マイケルはSEXとの交換条件のように、ハンナに
「本の朗読」を求められ、きっと、当初は意味も
わからずに毎回朗読をするし、観ている側もマイケル
と同じで、意味がわからなかった・・。
その朗読に、ハンナは時には涙を流し、時には怒る・・。
そして、その本の朗読を通して2人の関係は一層
濃厚なものとなる・・。
デート中のレストランでのメニューを手に取った際、
自分で注文をせず・・という不可解な行動、仕事で
事務職への昇進を命ぜられ、喜ぶべき出来事なのに、
直後にいきなりマイケルに何も告げずに失踪・・と、
観ているこちら側もマイケル同様、終始マイケルの
青年らしいあやふやであいまいで訳がわからない的な
自信なさげな目線で追い続けていく・・。

1966年の8年後、マイケルは大学生となり法律を学ぶ・・。
ゼミに参加して傍聴したナチスの戦争犯罪を問う裁判で、
被告の中にハンナがいるのを見つける・・ここから
我々もマイケルと共に裁判を見守る事になるのだが、
ここでもハンナの法廷で不利な証言に対しての不可解な
行動を目の当たりにすると同時に、我々観ている側も
前半の疑問符の付くいくつもの流れが、この事への布石
である事に気付き、これまでのハンナの一連の行動と
初めてリンクを始める事になる・・。

アウシュビッツでの与えられた職務において、ハンナ
なりに看守として悪い悪くないは横に置いておいて、
仕事として忠実に全うしていた事が裁判でわかるのだが、
この姿も当時の車掌の仕事で昇進が認められる所と
きちんと対比させている・・。
その裁判に通ううちに、不利な証言を証明するために
ハンナは筆跡鑑定を求められる・・しかし、ハンナは
拒否、マイケルは彼女の【文盲】であるという秘密に
気付き衝撃を受ける・・さらにこの裁判で、ハンナの
【文盲】である事と同時に、当時、マイケルを年の差が
ありながら起伏の激しい感情・・激しく求めていた姿・・
これも、アウシュビッツでの部分をひと時だけでも
忘れたかったのではないか?などと色々な部分を示唆、
その上で、アウシュビッツの闇の問題をも、深い部分
までは描かれてはいないが我々に程良く問いかける・・
というように、いや~もうこうした映画の途中で
あるにもかかわらず、この作品の醍醐味の一部を
ひしひしと感じる事ができ、実は暗めの作品なのだが、
とても幸せな気分になる・・。

そうした中、ハンナの【文盲】に気付いたマイケルの
心の葛藤が始まるのだが、ここまで観終わってもハンナ
が【文盲】だという事についての断定や説明もない・・
こうした断定する手法を用いない見事な味わいが、
マイケルの一貫した頼りない目線でアウシュビッツを
許さない世論と、自分が証言する事により、ハンナの罪が
軽減される可能性との葛藤を引き立てる・・。
しかし、マイケルは自分の将来を選び、証言をしない・・。
でも、マイケルの立場や将来を考えたら当然の事だと
自分も感じるので違和感はない・・そして、刑務所に
収監されるハンナと、この先、証言をしなかったハンナ
への負い目を感じながらのマイケルの未来・・。

原作を読んでいない先入観のない自分が、やはりワクワク
するのは、

【この先をどう描くのであろう?】

という事であった・・。
しかし、それさえも裏切らなかった。
その後、マイケルは罪滅ぼしのつもりなのかハンナに
自分が朗読したカセットテープを送り続ける・・。
それは、当時、ハンナに本を朗読したかのように・・。
そしてハンナは刑に服しながら獄中でマイケルの朗読の
テープを頼りに字を覚えてゆく・・。
なんという罪滅ぼしと愛がうまく重なったストーリー・・
と浅はかに感じていた自分は、最後にそのレベルで
ストーリーを追いかけていた事に恥ずかしくなる・・。
そう・・字を覚えたのは自分が罪を犯した相手である
ユダヤ人女性へ手紙を書く事だった・・それによって
ハンナ自身の罪を少しでも償おう・・という彼女の
気持ち・・それと同時に読み書き聞きにおいての

【文字という素晴らしい力】

そして現代に関しては、何も苦労する事無く、教育を
受けられ、我々は字を読む事も書く事も不自由なく
学ぶ事ができ、文字を駆使して我々は気持ちや感情を
他人に伝える事ができる・・日本の、そして現代の
人間の幸せ・・そんな事までも改めてこの映画で
感じ取る事ができる・・。

いやいや、どの方向から観たとしても間違いなく素晴らしい
映画でした・・個人的には超お勧めでございます・・。