「何もかも皆懐かしい・・」
宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長の有名なセリフ
だが、先日の
「ニセコスキー場のリフト券が1万円を超えた」
という報道を見て、自分の脳裏にはその
セリフが浮かんでしまった・・(笑)
13年ほど前まで、自分はスキーが大好きで
毎週のように行っていた。
しかし、スキーはなかなかお金のかかる
趣味で、スキー場の1日券が4,000円前後、
交通費やガソリン代、食事代を含めると
1回あたり1万円はかかるスポーツだった。
そのスキー場の1日券が1万円を超え、
更にニセコは食事代もバカ高いことで有名
なので、交通費を含めれば1回2万円の
時代が来たという驚き・・。
しかし「スキーの価値は変わったのか?」
といえば、決してそうではない。
むしろ、日本では全盛期のスキー人口の
1/4程度にまで減少し、更なるマイナー
スポーツになっている。
他の地方のスキー場を調べると、1日券は
5,000円前後で設定されているところも多く、
インバウンド(訪日外国人旅行者)向けの
スキー場が強気な価格設定をしているだけ・・。
ただ、白馬村などが典型的な例だが、
インバウンド需要の影響で地価や賃貸料が
約3倍になっているため、地元住民に
とっては複雑な問題だろう。
バブルを知っている世代からすると、
「あの時代に日本人が海外でやっていた事を、
今度はやり返されている」
と感じるかもしれない。
悔しいが、これが今の日本の国力を示して
いるそうだが、冷静に現在の日本の状況を
少し整理してみよう。
世界における日本のポジションは「円安」。
「円安」になると、日本の製品が海外で割安に
なる為、自動車や電子機器などの輸出が増加し
関連企業の利益も拡大する。
更に、輸入品が高くなることで国内物価が
上昇し、インフレが進みやすくなるが、
それに伴って企業の収益も向上する。
その為、多くの日本企業にとって「円安」は
歓迎すべきものだ。
実際、法人税収は昨年度、バブル期を超えて
過去最高を記録し、6年連続で更新中だ。
その波及効果で雇用も拡大し、売り手市場の
影響から初任給の引き上げなど、賃金の上昇も
始まっている。
また「円安」は日本を訪れる外国人観光客に
とって旅行コストを低下させる為、訪日観光客
が増加している結果、観光業や関連する
サービス業(ホテル、飲食、交通など)が
活性化し、地域によっては大きな恩恵を
受けている。
例えば、ニセコの雪質の良さがインバウンド
需要を呼び込み、スキー場のリフト代が
高騰するなど、波及効果が広がっている。
更に「円安」によって、海外で得た収益を
日本円に換算した際の金額が増える為、海外
資産を多く持つ企業や投資家の利益も拡大する。
財務省によれば、2023年末時点での日本の
「対外純資産(日本政府や企業、個人投資家が
海外に保有する資産から、海外投資家や企業
からの投資や借り入れを差し引いたもの)」
は471兆3,061億円で、前年比12.2%増加した。
実は、日本は5年連続で過去最高を更新し、
33年連続で「世界一の対外純資産国」なのだ。
マスコミはバランスシートの負債側(国債など)
ばかりを取り上げて騒ぐが、日本の資産側の
規模は実は非常に大きく、総合的に見れば
「円」は「安全資産」とされる所以でもある。
ただ、個人レベルで見ると、「円安」には
リスクもある。輸入コストの増加による
光熱費や食料品の価格上昇が家計の負担と
なりつつある。
しかし、海外のような急激なインフレを
抑え込めている点では日本は優秀だと言える。
そして残念なのはインバウンド政策だ。
「日本は安い」と言われている今こそ、
外国人向けに数%の税金を課し、その収益
をインバウンド対策に活用すれば良いのに、
その準備が全くできていなかった事は
悔やまれる。
30年前、生意気にもカナダにスキーに行った
のだが、その際、外国人観光客には通常の
税金に加えて追加の税金が課されていた。
しかし、領収書を保管しておき、帰国後に
カナダ大使館に提出すれば、余分に支払った
税金がカナダドルで返金される仕組みだった。
このシステムは非常に優れている。
返金されたカナダドルをそのまま持って
いれば、またカナダへ行こうという動機に
なるし、大使館に行くのが面倒だと思う人は、
そのまま税金として納める事になる。
多少の手数料を払ってカナダドルを日本円に
換える人もいるだろうが、おそらく少数派
だろう・・。
つまり、カナダ政府にとってはほぼメリット
しかない。
ところが、30年前にカナダで実施されていた
この制度が日本では未だに考えられてもいない。
それどころか、日本は外国人観光客向けに免税
制度を整え、一部の企業だけがインバウンド
需要で儲けている状況だ。
これは実にもったいない話だ。
とはいえ、日本がこうした政策を急に決めて
実行できない「スローリーさ」も、個人的には
嫌いではないけどね・・(笑)
まあ、ニセコもディズニーランドも
「外国人向け高額アミューズメントパーク」
と考えれば、日本全体が急激にインバウンド
依存にならない限りは問題ない。
ただ、それに傾きかけている事だけが少し心配だわ。