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栂池高原スキー場・雪崩事故を考える

前回に続けて、スキー場関連をもうひとつ・・。
北安曇郡小谷村の栂池高原スキー場で2月3日、
愛知大(愛知県豊橋市)の学生と非常勤講師の
計7人が巻き込まれ死者は2人を出した雪崩事故・・。
引率・指導していた同大の沢田和明非常勤講師(61)は

【指導者としてあるまじき行為】

と頭を下げていたが、やはりどこからどうみても
その通りなのだが、この沢田講師はなぜそうしたのか?
をちょっと考えてみたい。
まず会見で沢田講師は、看板やネット、スキー場内
のアナウンスで、【立ち入り禁止】を認識していた
要旨の事を言っていたが、

【ゲレンデは中級者向けで、彼女たちの技術
 では無理がある】

この言葉と、

【午前中にこの林間コースを滑っていた】

という言葉をふまえると、沢田講師を擁護する訳
ではないが、実は【立ち入り禁止】はすでに
リフトに乗った後、もしくは降りた後だったり、
その【林間コース】に差しかかる直前にでも、
認識したのではないだろうか?

引率していた学生7人は全員女子で、沢田講師に
よると、いずれも初心者との事。
そもそも沢田講師のミスは、頂上へ初心者を
連れて行った事なのだが、自分も沢田講師の立場
だったら、初心者の7人でも午前中において
【林間コース】でなら滑れる事がわかっている
なら、頂上からでも【林間コース】でなら、
もう一度長い距離を滑る事が練習にはなるし、
また午後も長い距離を滑る楽しさを味わせて
あげたいし、沢田講師の言うように、

【(学生に)滑れたという自信を、もう一度
 確かめさせてあげたかった】

という気持ちも痛いほどわかるだけに、もし、
いざ頂上で【林間コース】の【立ち入り禁止】を
初めて把握したとしたら、自分が沢田講師と
同じ立場なら、どうしていただろう?と
ちょっと考えさせられた・・。

実は、栂池スキー場は頂上からこの【林間コース】
の他に2コース下へ行くコースがある・・ひとつは
【ハンの木コース(中級者)】もうひとつは
【馬の背コース(上級者)】だ。
しかし【ハンの木コース】が中級コースとはいえ、
実は最大斜度は30度と斜度はきつい・・。
もうひとつの【馬の背コース】は上級コースで
最大斜度32度&コブ斜面がある。
雪崩のあった【林間コース】はいわゆる初心者用
の迂回コース・・しかし、そこは【立ち入り禁止】
になってしまった訳だ・・。
ボーゲンでやっとノロノロと滑っているであろう
と予測する初心者に、例えフラットバーンだと
しても、30度のバーンを滑らせるのはとてもじゃ
ないが無理・・。そこで、沢田講師は

【(林間は)ストックで少し押せば動く(進む)
 程度の雪だったので、いけるんじゃないかと考えた】
【圧雪車が来て雪面整備をするまでのコース閉鎖
 だと勝手に解釈した】

と、どうしても滑り降りる事を強引に考えたようだ。
確かに、雪崩は緩斜面では起きにくい・・。
いわゆる急斜面のバーンの上を滑る落ちる事が
ほとんどだからね・・。
とは言え、ここは自分とは考え方が違う。
仮に下から圧雪車が来て雪面整備している最中だったら、
もっと迷惑になるしね・・(笑)
じゃあ、自分が沢田講師だったらどうするのか?
迂回の【林間コース】が【立ち入り禁止】ですから、
もちろん、中級コースの

【ハンの木コース】

を滑る事を選択する。
もちろん斜度がきつくて滑れない所は、大変だが、
スキーをはずせば降りられない事はない。
そして滑れそうな斜度の所まで、端っこを歩かせて
下山させるしか初心者が絶対にケガをしない確率の
高い方法はない・・。

立ち入り禁止については

【雪面の整備ができていないからだと思った。
 雪崩の危険性の認識はなかった】

とも弁明していた所をみると、スキー場は雪崩が
あった事をしつこくはアナウンスしていなかった
事になる・・ここはスキー場にも落ち度はある。

【林間コースは雪崩のために立ち入り禁止】

と、しつこく放送していれば、いくら強引な
沢田講師でも入り込まなかっただろう・・。

一方で、雪崩に巻き込まれる直前、現場付近で
以前に起きたとみられる雪崩の跡を沢田講師は
見つけたが、引き返す事なく【立ち往生はまずい】
と考え、そのまま進んだ事も会見で明らかになった
が、【林間コース】に入り込んでしまって、自分も
その状態だったら同じ行動を考えたと思う・・。
コースを引き返し、初心者をヨチヨチ登らせている
方が雪崩が起きた時には被害が大きくなるだろう
と考えられるしね。
それならば、一刻も早く雪崩が起きる前に、下に
降りてしまおうというのが、やはり当たり前の
心理・・ここは間違っていない。

しかし、たらればの話ではあるが、交通事故も
そうだが、たった1秒その場へ入るのが
遅かったら・・たった1秒その場を過ぎるのが
早かったら・・事故には巻き込まれていなかった
かもしれない・・。
今回も、スキー場が雪崩を公開していたら・・
頂上まで連れて行かなかったら・・午前中に
林間コースを滑っていなかったら・・スノーボーダー
の遭難事件もそうだが、やはり不運には色々な偶然や
驕りが重なるものである。
運命というか・・不思議なものだ・・。