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アップル帝国の正体【ネタバレ注意!】

長年の東京からいらして頂ける常連の
お客様から

「読んだからあげる!」

と頂いた本・・。

ファイル 2199-2.jpg
【アップル帝国の正体(後藤直義・森川潤著)】

25年ものMacユーザーである自分にとっては、
もう興味津々になる題名である・・(笑)
思っていたよりも面白く、一気に読んで
しまいました・・(^^*)(笑)
なぜなら、自分が知っている・・と言っても、
それはやはり噂話の域を出ていない事は事実。
なぜなら、Appleは・・というより、スティーブ・
ジョブズ氏は、常に徹底的な秘密主義だった
為に、Appleという会社の情報は常に謎に
包まれていたからね・・(^-^;
しかも、巷で目にする書物は、ジョブズ氏の
華やかさを中心に描かれたものが多い中、
この書は、Appleの表にあまり出てこなかった
取引先である日本の製造メーカーや、Apple
の冷酷且つ緻密な販売などの過去から現状
にスポットを当て執筆されており、個人的には
ほとんど新たに知る事が多かった。

Appleはスティーブ・ジョブズ氏の死後、
これまで徹底的な秘密主義を敷いて秘密
にしていた部品の供給企業の一覧表を、
突如としてホームページ上で公開した・・。

もちろん最近では、販売当初からiPodや
iPhone、iPadの肝心要な部分には多くの
日本の技術が使われている・・という話は
漏れ伝わっていましたので、予想通りと
いうか、漏れ伝わっていた通りというか、
そのリストに掲載されていた企業数156社
のうち、実に5分の1は日本企業で31社
だった・・。

でも、以前もそれは、報道のされ方にも
よるが、例えば初代iPodの背面の
滑らかで繊細な

【ステンレス鏡面仕上げ】

は、新潟・燕市にある「小林研業」という
小さな会社の5人ほどの研磨職人が
約4年間手掛けた・・みたいな、どちらか
というと【ヒーロー扱い】であり、

「誇らしい」

意味合いの方が強かった・・。

しかし、読み進めて行って、ちょっと
ビックリした・・。
自分のその意味合いは180度くらいに
違っていたのだ・・(◎_◎;

なんと、そうした中小企業ならまだしも、
シャープ、ソニー・・といった大企業までもが
立場は完全に

【Appleの下請け】

だった・・(^-^;
ま、とはいえ、Appleから始まった訳ではなく、
10年位前のノキアの時も似たような感じ
でしたがね・・(笑)

それらの会社が【Appleの下請け】に
なるまでの話も実に興味深かった・・。
しかし、10年位前はともかく、今の時代に
コレって?日本企業も知恵が無さすぎな
気がする・・(-_-;)

なぜなら、この文中に出て来る

【Appleの下請け】

というこの日本の大企業の姿と言うのは、
考えてみれば、日本の大企業たちが
中小企業に課していた下請けへのノルマ
や下請けへの圧力の方法とさほど違って
いないのだ。

もう、本当にいつの時代だよ・・。

だから、昔の手法そのままで、日本の
大企業が、今までコストを徹底的に安く・・
自分たちの製品の為に新しい機械を
購入させ、ある程度やらせた所で、
コストダウンを命じ、できなければ
容赦なくもっと安い所に替える・・。
その結果、新しい機械をいれた中小企業
は放っておいたら倒産するので、あわて
ふためく・・結果、コストダウンに泣く泣く
従わなければならなかったようなケース
をそのままAppleにやられているのだ・・。

話の中でシャープが途方に暮れている姿
が描かれているが、中小零細企業から
言わせてもらえば、甘い・・。
例えば、先に書いた初代iPodの背面の
滑らかで繊細な【ステンレス鏡面仕上げ】
に携わっていた「小林研業」という会社は、
今ではその技術は、Appleが撮影して
中国に教え、質の悪い磨きでごまかされて
いるそうだが、いつまでもAppleの仕事が
続く訳がないというのは中小零細企業の
常・・。

彼らも、逆に初代iPodの仕事を利用し、
研磨業者が集まって【磨き屋シンジケート】
という技術者集団を結成、初代iPodの
仕事が無くなった今も、色々な仕事に
繋げている・・。
確かに5人で磨いている会社と工場を
丸ごとApple用にした会社ではリスクの
背負い方が違うけど、同じビジネスが
未来永劫続くなんて事は無いんですから。

ただAppleに「工程をビデオ録画」され、
さよならをされている訳だが、Appleが
Apple製品に携わっている事を公表する
事を禁じている条件を逆手に取り、研磨
技術を他社へもらしたら巨額の損害賠償
請求する位の契約ができない事は、今の
日本企業の課題であろう・・。

だから、この本には大きなヒントが
いくつもある・・。

ならば逆手に取って、日本企業でないと
いけない「内部部品」をこぞって開発して、
外側からではなく、内面からAppleしかり、
大きな勢力には小さなアリが支配する力を
持つ道もあるという事・・。

本当は音楽配信などP2Pが進んでいた
日本だったら、一番最初にできた事なのに、
邪魔されるシステムが日本を今の状況に
陥らせている元凶であるという事・・。

そして何と言っても、大企業ばかりに
日本は投資してきたために、ベンチャー
がアメリカのように育っていない事・・。
今や、アメリカは昔からあるゼネラル
モーターズが支えているのではない・・
AppleやGoogle、マイクロソフトなどなど
ベンチャー企業が支えている・・この差は
かなりでかい・・という事・・。

今や、ヤマダ電機が赤字に転落、商品を
見るための所に成り下がり、結果Amazon
のショールームと化している時代だ・・。
新しい巨大な力に、今までの巨大な力が
慌てふためく・・。
日本は本当に【ネット】の力を甘く見ていた・・。

その【ネット】と同じく、恐らく一度つぶれ
かけたAppleをこうして甘く見ていた
過去は過去で、これから日本企業は
どうするのか?
Appleが勝ち続けている限り、日本の企業
は負け続けるのか?
末端に部品を無理矢理に作らせ、量販店
にまるで背広を着たヤクザのような強力な
交渉と統制を行う、この古くさい姿が
いつまでも続くとも思えない・・。
今後の第2ラウンドにそれらを覆す日本企業
の底力をぜひ感じたい・・。

Apple好きの自分にとっては、何とも複雑な
気分にさせられる面白い本でした・・はい・・。