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【17型コラーゲン】という光

まだまだ先の話ではあるらしいが、白髪
や脱毛に関して、画期的なメカニズム
が発表された。
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白髪や脱毛の防止には、毛穴にあるコラーゲンの一種が不可欠な役割を果たしていることが分かった。
東京医科歯科大と金沢大、北海道大、弘前大などの研究チームが4日付の米科学誌セル・ステムセルに発表した。
この「17型コラーゲン」は毛髪の角化細胞を生み出す毛包幹細胞で作られ、脱毛を防止するとともに、髪を黒くする色素幹細胞の働きを維持するという。
東京医科歯科大の西村栄美教授によると、コラーゲンを多く含む食品を食べてもこの17型コラーゲンが増えるわけではなく、白髪・脱毛防止効果はない。
しかし、毛包幹細胞が17型コラーゲンを作る働きを促進する物質が見つかれば、予防・治療薬になる可能性があるという。
さまざまな種類のコラーゲンのうち、17型は皮膚では表皮をその下の真皮につなぎ留める役割がある。
しかし、毛穴では中ほどのやや膨らんだ部分「バルジ」に毛包幹細胞をつなぎ留めるほか、毛包幹細胞が自ら増殖するとともに角化細胞を生み出す機能の維持にも
必須なことがマウスの実験で分かった。
さらに、17型コラーゲンは別のたんぱく質「TGFベータ」を介して、毛包幹細胞に隣接する色素幹細胞の働きも維持していた。
17型コラーゲンを作れないよう遺伝子操作したマウスでは、若いうちに白髪になり脱毛した。
人間でも先天的に17型コラーゲンがなく、脱毛する疾患が知られていたが、これまでメカニズムが不明だった。(時事通信)
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コレ読んでも、普通の人はなかなか
わかりづらいです・・(-_-;)
しかし業界ネタ&自分の得意領域で
ありますので、もう少しわかりやすく
説明してゆきたいと思います。
まず、単語がわからないと理解は無理
なので、そこを噛み砕いてゆきましょう!

そもそも、髪の毛は、頭皮(土)髪の毛
(作物)として表現される場合が多いが、
正確には皮膚(頭皮)が変化してできた
【角質器】である・・。
また、白髪というのは白い色をしている
のではなく、実は【透明】であり、光が
反射し合い白く見えている。

ファイル 1662-1.jpg
マイクロスコープで拡大してみると、この
様にきれいに【透明】である・・という事は、
白髪というのは白に染まっているのでは
なく、色素が無い(造られていない)と
いう事である・・。

それをふまえて、

ファイル 1662-2.jpg
上記の【図1】をご覧頂きたい・・。
いわゆる【毛根】と呼ばれる部分の
図である。

【毛根】は、Aが【毛 (毛幹)】Bが
【表皮】Cが【皮脂腺】で、文中に出て
来た「毛穴では中ほどのやや膨らんだ
部分」というのがDの【バルジ領域
(バルジとは「bulge=丸く突出した
部分」という意味)】、Eが毛根を包む
【毛包】で、Fが【毛母】である。

聖マリアンナ大学の大島博士と、フランス
高等教育院のバランドン博士達が、Dの
【バルジ領域】と呼ばれる場所に存在
する細胞が、新しい毛根を完全に再生
できるだけでなく、表皮、汗腺、皮脂腺の
すべての皮膚関連臓器を再生する能力
を持つ事を証明しており、現在の毛髪の
理論では、Dの【バルジ領域】が毛髪に
関してのカギを握っている事はわかって
いた・・。

で、中間の円の部分を大きくしたのが
【図2】である。

ファイル 1662-3.jpg
Aが【毛 (毛幹)】Dが【バルジ領域】
Eが【毛包】は【図1】と一緒・・。
今度は、Gが【バルジ下領域】Hが
【毛包幹細胞】Iは【色素幹細胞】Jが
【17型コラーゲン】である。

まず、毛を造る組織である【毛根】には
2種類の幹細胞が共存する・・。

ひとつはD【バルジ領域】とG【バルジ
下領域】に局在するHの【毛包幹細胞】
という自ら増殖し、角化細胞を作り出す、
毛は抜けてもきちんと新しく生えてくると
いう自然の毛の生え変わりに必要不可欠
な幹細胞が存在する・・。

余談だが、普通の細胞というのは、外界
からの刺激(紫外線や化学的刺激など)
にさらされると細胞に異常を生じ死んで
しまうのだが、Hの【毛包幹細胞】・・
この細胞内では、細胞に起きた異常の
治療(DNAの修復)をも行うすごい細胞
だったりする。

髪はこのすごい幹細胞のおかげで
絶えず新しい毛を再生している・・。

もうひとつはG【バルジ下領域】に局在
するIの【色素幹細胞】という毛の
新陳代謝に応じて増えたり、分化したり
しながら、毛に色素を供給する事に
必要不可欠な幹細胞が存在する・・。

と、ここまではすでに今までに発表され
わかっている事・・。

今回出て来たJの【17型コラーゲン】
を掘り下げる前に、記事文中にある、
そもそも【TGFベータ】とは何か?

【TGFベータ】とは【Transforming
growth factor β】の略で【トランス
フォーミング増殖因子】または【トランス
フォーミング成長因子】と呼ばれ、
シグナルを介し、組織の発生、細胞の
分化、胚の発育において、極めて重要な
役割を果たすたんぱく質の事である。

そもそも【17型コラーゲン】は皮膚に
おいては【表皮】をその下の【真皮】に
つなぎ留める役割がある事、また、
先天的に【17型コラーゲン】を欠損
すると早発性の脱毛が見られる事は
すでにわかっていた。

で、今回のJの【17型コラーゲン】に
ついてわかった事は、

○Jの【17型コラーゲン】が【TGFベータ】のシグナルにより、Hの【毛包幹細胞】をつなぎ留め、【毛包幹細胞】が自ら増殖すると共に【角化細胞を生み出す(毛を作り出す)】という機能を【維持】するのに必須である。

○Jの【17型コラーゲン】がHの【毛包幹細胞】に隣接するIの【色素幹細胞】の働きをも【維持】している。 (黒髪からIの【色素幹細胞】が枯渇すると白髪になる)

○Hの【毛包幹細胞】を含む基底細胞でのみ、Jの【17型コラーゲン】を発現させると一連の異常がすべて回復する。

○Jの【17型コラーゲン】が、Hの【毛包幹細胞】から欠損すると、なんと隣接するIの【色素幹細胞】に【TGFベータ】のシグナルが入らなくなり消滅し、Hの【毛包幹細胞】をも消滅させてしまい毛が生えなくなる。

という、Jの【17型コラーゲン】が
【TGFベータ】のシグナルを受けて、
Hの【毛包幹細胞】のを裂・増殖・分化
させる事により【維持】し、白髪と脱毛を
抑制するという

【ニッチ細胞(幹細胞を支える細胞)】

として機能する・・という事がわかった!
という光のあるメカニズム・・。

この先の部分は自分の勝手な仮説だが、
単純に、この【17型コラーゲン】の
メカニズムを飛躍させると、今までは
毛穴自体が消滅したら髪は生えないと
されてきた。
しかし、先に書いたように、毛は皮膚が
変化してできた【角質器】である・・。
その皮膚には【表皮幹細胞】と【毛包
幹細胞】という2種類の上皮系幹細胞
が存在する事はすでにわかっていて、
ここでの【毛包幹細胞】は毛包、表皮、
汗腺や皮脂腺等あらゆる皮膚付属器
に分化する事がができる幹細胞・・。

この際に【17型コラーゲン】の
メカニズムが働くのなら、毛穴自体が
消滅し、髪が無くなってしまった部分
でも、皮膚自体に存在する【毛包幹細胞】
が【17型コラーゲン】により、活性化し
髪が復活する可能性も出てくるという
考え方も出来る・・。

いやいや、これは毛髪理論がもっと
わかりやすくなったと同時に、仮に
【17型コラーゲン】を体内で増やせる
方法が確立されたなら、現在髪がある人
がこれ以上脱毛しないようになる、髪が
太くなる、白髪が防げる、毛穴自体が
消滅し、髪が無くなってしまった部分でも、
髪が復活する可能性・・と、白髪と脱毛の
予防や治療、毛髪再生への応用が
大いに期待される・・。

とはいえ、通常のコラーゲン同様、
コラーゲンを多く含む食品を口から
摂取しても【17型コラーゲン】が
増える事は無い

今のところ人工的に化学合成できないと
いう事だけでなく、頭皮や毛根で
【17型コラーゲン】がどのように作られるか?
についてはまだまだ謎だそうで、自分に
【17型コラーゲン】が将来適用できる時
が来ても、もうこの世にいない時かも
しれません・・(^-^;(爆)●〜*
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<2016.02.10・新たな発表があったので追記>
【17型コラーゲン】という光(Part.2)