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告白【ネタバレ注意!】

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久しぶりの映画・・暑かったし、ボヤボヤしていると
公開終了しちゃいそうだったので、重い腰を上げて、
観てきました話題の【告白】・・。

ショッキングな内容故、映像化が難しいとされていた
原作を、【下妻物語】や【嫌われ松子の一生】と、映像
に豊かな彩色を遣い表現する中島哲也監督が、一体
どのように表現するのか?非常に興味があった。
で、観終わって・・いやいや、やはり噂通り&評判通り
の【大傑作】でした!!(^^*)
また、中島ワールドの色遣いも、今回は濃淡を中心に
【血】の赤を鮮明に表現されていた。
なんで今回は豊かな彩色が遣われていないのか?と
ちょっと気になっていましたが、観終わると

【飛び散る血の赤】

を鮮明に描きたかった事や、その【飛び散る血の赤】
をバイオレンス映画やスプラッター映画と一線を
引くために、Radioheadの音楽と共に実に無機質で
淡々とストップモーションを駆使しながら緩やかに
描いていた事もわかると、映像の奥深さを観終わって
からヒシヒシと感じる素晴らしさ・・。

と、前置きが長くなったが、本題の映画の内容だが、
娘を殺された女教師(松たかこ)の凄まじい静なる
憎悪での復讐が根幹の話・・。
冒頭の30分程、松たか子さん演じる森口先生の告白
による【教室】内での映像なのだが、もう、ここが
本当に素晴らしい・・。
恥ずかしながらリアルタイムでは「なんだ?この
バカ共は!!それにしても、生徒をバカ共に描き過ぎ
だろう・・中島監督!」みたいな浅はかな目線で眺めて
いた・・が、観終わるとそれは大きな間違いであった事
に気付く・・。
徹底的に自分勝手な生徒達のリアクションだと思って
いたが、森口先生の告白をメインの軸に置き、バラバラ
でありながら実は【的確に】生徒達のリアクションを
織り交ぜて、その後に続く物語に

【それぞれが他人を気遣う余裕が無い中で起こる】

という事を伝えていた・・これまたなんと奥深い
中島ワールド・・_| ̄|○
【少年法】で守られた子供達を命を殺す事でない心
を殺す手法で追い詰めてゆく・・。
その根幹に基づいて【呪怨】のような方式を使い、
森口先生のセリフを借りるならば、1人は殺意があった
が殺人者ではない(少年A)、1人は殺意は無かった
殺人者(少年B)、そして1人はそれをつなぐ人物の
主要3人の生徒それぞれの目線から良くも悪くも自身を
肯定し心を明かしてゆく手法・・この方法はうまい・・。
(ここは中島監督が・・ではなく、原作がこうなって
 いるようですが・・)
その3人の背景は、どの家庭にも頼る【父親の姿】が
不在という事を軸にして展開されている・・。
そのひとつ、殺意は無かった殺人者(少年B)の姿を、
なんとモンスターペアレントの母親の目線を通して
描くために、暗闇に追い詰められてゆく迷える母子の心
が壊れていく様がグイグイと迫ってくる・・この母親役
の木村佳乃さんが実に見事で、少年B役の藤原薫くんの
演技もかなりの迫力である。
対照的に殺意があったが殺人者ではない(少年A)の
姿は、逆に母親を求め、母に注目されたい一心で有名に
なる事に憧れる狂気目線から描かれているのだが、物語
のバランスのために、きっと対比し肥大させた形なの
だろうが、どちらも、その辺に転がっている

【現代の家庭の多かれ少なかれ歪みを抱えた姿】

である・・。
そこから自分も含め、親として子供の【歪みに気が付いて
いない】だけかもしれない恐怖心に襲われます・・。
同時に、自分の子供が劇中のような少年達に殺され、犯人
が13歳以下で結果【少年法】に守られる・・という事に
いきなり直面した時に、自分はどうなるのか?その上で、
主人公である森口先生の行動をどう考えるか?この歪んだ
社会構造だからこそ、自分が娘を殺された主人公という立場
で観ると、この復讐の仕方はなんとも気持ちが良かったり
する自分が存在する・・。
それこそが、実は人間の弱さであり恐ろしさでもある・・。

そんな中、最後くらいは救われるのか?と思いきや、
【カイジ】じゃないが、最後の最後まで救いようがない
・・本当に誰も救われないのである・・(-_-;)(笑)
【少年法】【死刑廃止】などなど、被害者など無視し置き
去り声高に【命を大切に!】【殺人犯にも人権がある!】
などと、生きている者に最大限に人権を尊重するこの
世の中・・。
この映画はこの点を大きく皮肉っている・・が、単純に
白黒つけるための復習劇でもない・・。
全てにおいて【やられた】映画でした・・。
大満足です・・はい・・(^^*)