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公衆衛生職の責任において【国民の真の利益】とは?

先日、気になる記事が報道されていた・・
というか、以前から報道はちょこちょこと
されているんだけどね。
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カット専門理容店、洗髪台義務化の動き 21道県
 が条例 低料金牽制?
(2010年3月17日・産経新聞)

 短時間、低料金で髪のカットだけをする専門の理容店にも、条例で洗髪台の設置を義務付ける動きが全国で加速している。従来型の理容店店主が「髪を洗わないのは不衛生」として、各都道府県に「理容師法施行条例」の改正を求めているためで、客離れを警戒する理容店側には、不況の中で成長するカット専門店を牽制する狙いがありそうだ。
 約7万5000人の理容店店主が組織する「全国理容生活衛生同業組合連合会」(全理連)などによると、全国で理容店への洗髪台の設置義務を条例化しているのは、新潟、埼玉、広島、熊本など21道県。2007年ごろから全理連の地域組織が各都道府県に条例化を請願しているといい、千葉、群馬、大分の各県議会でも条例案を審議中だ。
 カット専門店では、切った髪の毛を洗髪の代わりに掃除機のような吸引機で取り除くのが一般的だが、全理連は「飲食店から『散髪後に訪れる客の毛が、食べ物に落ちて不衛生』といった苦情が寄せられており、衛生水準を維持するために洗髪設備は必要」と訴える。
 義務化といっても、既に開業しているカット専門店については「黙認」する経過措置が設けられ、新規開店や改装の際に洗髪台の設置を求めている自治体がほとんど。設置後も洗髪をするかしないかは客の判断に任されるという。
 こうした理容店側の指摘に対し、カット専門店側は「衛生上問題はない」と反発している。
 「10分1000円」のカットを売りに、全国で約400店舗を展開する大手チェーンの「キュービーネット」(東京)は「衛生上問題があるなら、洗髪台の設置ではなく洗髪を義務付ける必要があるはず」と反論。「店ではカットの際、首の周りに巻く紙も、くしも使い捨て。従来の理容店より衛生的だ」と主張し、対立姿勢を強めている。
 条例化に、利用客から疑問の声も。普段からカット専門店しか利用しないという東京都港区の男性会社員(56)は「短時間で済むので忙しい時は便利だし、切った髪の毛も気にならない。衛生上の問題というより、新たなサービスへの嫌がらせではないか」と話している。
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しかしまあ、カット専門店が新聞社の
スポンサーなのか?
記者さんがカット専門店が好きなのか?
よくわからないが、最後に恐らく書き手が
主張したい内容を、文中に自分の意見と
しては書けないから、まるでお客様の声
のようにすり替えて

【嫌がらせ】

と書くところなど、マスコミの常套手段を
使ってまで随分と偏った記事ですな・・(笑)
なんでこういう論点で書くのかな?(・。・?
とはいえ、これは同職業としてちょっと
書かないといけないネタですな・・
(* ̄∇ ̄*)v

この問題を論じる前に、そもそも【髪】が
綺麗なのか?汚いものなのか?という事
を知らなくてはいけない。

【髪】というのは、実は常に【+(プラス)】
に帯電しているために、ホコリやら汚れやら
をすぐに吸着してしまう・・。
さらにそこに整髪料をつけようものなら、
さらに汚れやホコリを吸着する・・
同時に、頭皮からは皮脂と汗が出ており、
またそれが汚れやホコリを吸着する・・
というように結構汚いもの
なのだ・・。

経験がある人ならばわかると思うが、
1日シャンプーをしなかっただけで、
結構髪のボリュームが無くなり、シットリ
してしまう・・。
そうそれだけ、皮脂と汗というのは出て
いるものなのだ・・。
経験がないなら、どれだけ髪が汚れる
ものなのか?2〜3日シャンプーをしないで
みるといい・・。

当店でも、お客様の年齢が上がるにつれ、
シャンプーの間隔が実は長くなる・・
これはいくつか理由がある。

●そもそも年配者になると、お風呂そのものに2〜3日に1回しか入らないのでシャンプーを2〜3日に1回しかしない。
●抜け毛が気になるので、お風呂には入るがシャンプーを極力しない。(誤った認識)
●整髪料をつけているので、洗うとまたつけないといけなく面倒くさいので極力洗わない。
●乾かしたりするのが面倒。

などなど、理由はそれぞれだ。
でも現実として結果はひとつで、思っている
ほど年配の方は髪を洗っていない
という
事実・・。

その結果をふまえ、当店では、全てのお客様
を作業の前に必ず洗髪を行うのだが、お客様
の汚れ方によっては2回、3回と洗う時も
ある・・。
それをきちんとしないと、髪を2〜3日も
洗っていないお客様の場合、櫛が1回の
カットで茶色に汚れてしまうし、バリカン
の刃も汚れてしまう・・。
そうなった時には、歯ブラシなどでゴシゴシ
やらないと落ちない・・。

表向き綺麗に見える髪だが、事前に洗髪を
しないと、繰り返しになるが、実は結構汚い
もの
なのだ・・。

よって、言葉は悪いが汚いものを扱う事が
大前提なので【公衆衛生】に基づいた
【理美美容師】という国家資格が必要で、
さらに店舗を出すには、実務経験3年以上を
えてから【管理理美容師】という資格を
取らないといけない・・。
その上で、【理美容師法】
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理容師法の第十二条  

理容所の開設者は、理容所につき左に掲げる措置を講じなければならない。

一  常に清潔に保つこと。
二  消毒設備を設けること。
三  採光、照明及び換気を充分にすること。
四  その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置
https://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO234.html
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に基づき、厚労省の中の保健所が、店の広さ
から明るさ、二酸化炭素濃度、手指の衛生、
器具の衛生、消毒施設の有無など、年に
1回抜き打ち検査をするなりして、監視をして
いる訳だ・・。

・・と前置きが長くなったが、上記のように、
我々理美容店は【お客様の髪は綺麗である】
という前提ではなく、【お客様の髪は汚い】
という前提に基づき仕事をするので、
衛生法規が存在する
のである。

そこを大前提にして考え【公衆衛生】の職種
である以上は、こうした衛生向上に基づく
条例制定は、どんどん厳しくなっていく事が
【国民の利益】であると結論づけられる・・
あくまでも厳しくなる事は国民負担ではなく、
店側の負担問題ですからね・・。

といっても間違えないで欲しいのが、記事に
あるように、決してカット専門店を牽制する
とかいう意味合いでなく、今現在、QBハウス
においては「衛生上問題はない」としても、
今後こうしたカット専門店が、より乱立した
際に、さらに低料金になる事により、経営者
の衛生意識が低くなる事や、コストを落とす
ために、衛生を軽視する流れになる
かも
しれない・・。

また、営業姿勢として【洗わない】と掲げ、
洗髪設備が無いという所では、言い換えれば

【どんなに汚い人が来ても洗えない】

という事である・・もちろんすごく汚い
ホームレスが来てもだ・・。
そこの危惧を考えるならば、厚労省は
【洗髪設備の設置義務付け】などという
生ぬるいものではなく、【公衆衛生】に
基づいている職種なんだという事で、
洗髪をしない事により、今後、お客様から
次のお客様へ従業員の手指や櫛から
簡単に伝染するような何か得体の知れない
ウイルスや病原菌が出現し蔓延したりする
前に、きちんと厳しい姿勢で取り締まる
責任があるのだ・・。

また、洗髪が必要かどうかは別にして、
カット後に洗髪をしないと、どんなに丁寧に
バキュームしても、髪は取りきれない・・。
しかも、取りきれない髪は洗われていない
汚い髪である・・。

そして、先に述べたように、髪というのは
原則として汚いものである・・という現実を
ふまえ、QBハウスなどに代表されるカット
専門店の大半は駅の中やショッピング
センターの中、繁華街など不特定多数の
人が集まる場所に展開している事を
考えれば、その後の飲食店など清潔を
求められる所へ行く可能性がある以上、
記事に出てくる「キュービーネット」ご自身
が提案するように、【洗髪の義務付け】、
または

【洗髪が営業内容にないサロンに営業許可を出さない】
【洗髪をしないサロンは営業許可を取り消す】

と、いうような厳しい方向性にも、迅速に
向かわなくてはいけない!とすら思って
いる・・。

そして、理容美容の衛生法規は全てにおいて
得体の知れないウイルスや病原菌が出現
してからではなく、出現する前に今よりも、
もっと厳しいレベルにして欲しいとすら
思っている・・。

そうする事が【公衆衛生】を推進する立場
として、本当の【国民の(衛生)利益】で
あり、同時に我々の業が胸を張って存続する
ための利益
なのだから・・。

まあ、でもそれはこちら側の【公衆衛生】を
実行する側の意見であるのだが、では、
今度はお客様側の【公衆衛生】を考えて
みよう・・。

お客様の中に、髪は切りたいが洗髪はお金も時間も
余計にかかるから洗髪なんていらない・・という
ニーズがあるから、こうしたQBハウスなどに代表
されるカット専門店が出現した・・個人的に、この
営業方針に関しては別にどうでもいい・・。
【洗髪は必要ない】とお客様が言っているのですから
それはそれで結構・・どうぞご自由にという立場だ。
記事にあるように、東京都港区の男性会社員(56)
いわく「切った髪の毛も気にならない。」と自分の事
だけを考えればそれでもいいだろう・・。

でも【公衆衛生】という事に関してはこうした考え方
は周囲に無配慮・無神経な自己中心的な考え方である。

なぜそう言い切るのか?

その前にカット専門店に行っている方々、洗髪は
必要ない!理容組合の嫌がらせだ!と思う方々に
お聞きしたい・・。

飲食店に入って、自分が食べている料理に料理人の
髪が入っていたら、その料理を食べたいですか?
自分の飲んでいる飲み物に、ウエイトレスの髪の毛が
入っていたら、その飲み物を飲みたいですか?

自分はどちらも食べたくないし、飲みたくないです。
きっと、食べたいと言う人は100人中1人もいない
でしょう・・この事を充分に理解した上で以下を
考えてみたい・・。

先に書いたように、カット専門店でバキュームされた
だけではカットした短い髪は取りきれない・・。
刈り上げたのなら特にだ・・。
それはカット専門店に行った後に白い紙の上で髪を
軽く手で地肌に沿ってグシャグシャしてみればわかる。
すごい量の短い髪が落ちてくるはずだ。
現に、記事にもあるように

【飲食店から『散髪後に訪れる客の毛が、食べ物に
 落ちて不衛生』といった苦情が寄せられている】

という事は、飲食店でカット専門店に行った後の人が
食事を終えた後には、少なくともそうした細かい髪が、
料理以前に、机や椅子に落ちているという現状が
安易に想像できる・・。

さらに、椅子がフェルトのような生地だったりして、
髪の毛が取りにくい生地などは次のお客様の
ご案内までに、刺さった短い細かい髪の毛を
取るのは凄まじい大変さである・・。
その椅子が白色系、黄色系など髪の毛の存在が
わかりやすい色だったら尚更の事である・・。

また、隣や前に座った場合、空調や人が歩いたりした
時などの風で、カットした短い髪が舞ったりして、
こちらの料理や飲み物に入ってしまう可能性も、
これまた安易に想像できる・・。

ましてや、料理人やウエイトレス、ウエイターが、
営業の合間にカット専門店に行ったりした後に働いたら、
調理中や運んでいる最中に取りきれなかった髪が混入
する可能性だってある訳だ・・。

自分の料理に人の髪が入るのは認めないが、カット
専門店に行った自分の髪が隣の人の料理や飲み物に
入る可能性に関しては急に「別にいいじゃん!」と
するならば、これは【公衆衛生】的に、どれだけ
自己中心的な考え方であるか?に気付くでしょう・・。

こうした事から、美容室などでよくパーマやヘアカラー
の待ち時間の時のコーヒーなどの飲み物のサービスも
実は禁止なのである・・。
しかし、現在は美容室などは、あらゆる所で飲み物の
サービスが行われており、きちんと【公衆衛生】と
いう立場で法規を守り、飲み物を出す所がまだ少ない
理容店が【サービスが悪い】とまで言われる始末である。

結果、顧客ニーズ&サービスの名の下に理容店の方が
【公衆衛生】という立場で法規を守り続ける事が
できなくなり、なし崩しで、飲み物サービスを
始めなくてはならなくなっているというのが、今の
現状なのである・・。

繰り返しになるが、やはりどういう方向から見て
みても【公衆衛生】という観点で論じるならば、
髪は汚いという大前提に立ち、最低でも条例で

【洗髪の義務付け】

にならなければいけない。
個人的には、繰り返しになるが、記事のような条例
で【洗髪台の設置義務付け】などという生ぬるい
ものではダメで、条例よりも上にある理美容師法
において【洗髪の義務付け】と改正して頂きたい
くらいである・・。

このように、自分のような町の普通の一理容師の
立場であっても、【公衆衛生】の視点に立つだけで、
これだけの事を危惧できるのですから、本当なら
そこそこの理容店や飲食店などをきちんと取材する
だけでも、上記の危惧はわかるはずである・・。

でも、それはしていない・・意図的なのか?
初めから結論ありきで記事を書いているからか?
わかりませんが、新聞も感情的に経営が低迷して
いる理容店が、安いカット専門店に団体の力を使って
圧力をかけているみたいな【金銭の利益、不利益】
の側面としての幼稚なレベルの内容で、一方的に
偏るつもりでペンを握るんじゃなくて、こうした
【国民の公衆衛生の利益、不利益】という観点で、
低価格化によって失われてしまう本質的な部分を
きちんと書いて欲しいね。

本来ならマスコミは、

【飲食店で、洗髪されていない汚い髪が飲食物に
 安易に入るような環境を見過ごす訳にはいかない。
 理容組合は、大きな力を振りかざすのならば、
 洗髪設備義務付けなどという生ぬるい事でなく、
 国民の公衆衛生を守るという立場なのだから、
 洗髪義務付けに条例を改正させるように動くのが
 真の姿であろう】

ぐらいの論点で【サービスの名の下に低下する
公衆衛生】に対し、警鐘を鳴らしていかなくては
いけない立場なのに、それを怠って一方へ偏った
報道をする
・・だから【マスゴミ】と揶揄される訳で、
マスコミのこうしたレベルの低下にも個人的には
警鐘を鳴らしたいのである・・。

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