記事一覧

名ばかり管理職 

店長など管理職の肩書が付くだけで【重要な職務と権限】を
与えられず、残業代などが支払われない・・。
そんな中、先日、日本マクドナルドに対し、店長に残業代を
支払うよう命じた。

その前にも紳士服のコナカの元店長が、

【仕事は一般従業員と変わらないのに、管理職という理由で
 残業代を払わないのは不当だ】

と訴えた労働審判では、会社側が約600万円を支払う事で先日、
合意した。マクドナルド事件の布石はここできちんとできていた。
じゃあ、なぜ教訓にならない?という事だが、裁判が始まった頃
には判決が出ていなかった事だから仕方ないんだろうけど、

そこに今回のマクドナルド事件の判決が出る。
この裁判も、

【店長は時間外労働の適用の除外を認めている労働基準法
 第41条2項の管理監督者にあたり、残業代を払わなくてもよい】

という事で会社が残業代を払っていない事に対してマクドナルドは

【マクドナルドに勤務する店長は、フランチャイジーにおける
 オーナーと同様、売上管理を含めた店舗管理全般について
 最終的な権限をもち、自己の勤務時間は自分でコントロール
 する事ができ、また、管理職としての給与を支払われており、
 労働基準法第41条2項に定める管理監督者に該当する】

すなわちマクドナルド店長は、労働基準法第41条2項の
管理監督者に【あたらない】として残業代の支払いを
求める争いだった。
個人的には漠然と考えた時にマクドナルドの言う事の方が
正しいと思っていた・・しかし、今回、訴訟を起こした
高野店長の話を聞いていくとちょっと変わってくる。

なぜ、オーナーと同様、店舗管理全般について最終的な権限
をもち、自己の勤務時間は自分でコントロールする事が
できるのならば、高野店長は月100時間以上の残業や
2か月も休めない環境が発生したのか?
やはり勤務人数を抑えなくてはいけない強い圧力があった
と安易に予想できる。

しかし、午前4時半に自宅を出て、6時過ぎには店に入る。
7時に開店した後は、アルバイト店員に指示しながら自ら
調理や接客・・売り上げ確認などの店長業務をこなし、
帰宅は午前零時過ぎ・・3〜4時間の睡眠で朝を迎える、
仕事中にぎっくり腰になり、労災認定をされたにも
かかわらず交代のスタッフがいないため翌日から出勤、
家族旅行もスタッフのやりくりがつかず旅行もできず・・。
と、高野店長の事例を聞くだけでも、ハンバーガーを
100円にする裏側では従業員の悲惨な労働力がコスト
に反映されているんだろうね。

確か、マクドナルドは従業員の奥様の誕生日には花束が
会社から届くなど、家族を大切にするリーディング
カンパニーとして【プレジデント】や【東洋経済】など
でも紹介されていた。
でも、やはり表向きのPR内容と裏側の本音は違うんだよな・・。

結果、

管理監督者を【経営者と一体的な立場にある者】と認定。
店長は

(1)企業全体の経営方針の決定過程に関与していない
(2)権限は店内に限られている

という事などから、肩書は店長であっても実質的に管理職
ではないと裁判所は判断した。

訴訟の陳述で、高野店長の妻・邦子さんは

【夫は「マクドナルドという会社は今も好きだ」と言う。
 好きな会社であればこそ、安心して働けるように
 しなければ、と思う】

と、会社を困らせるために訴訟しているのではないという
夫の気持ちを代弁していた。
さらに高野店長の言葉も純粋だ。

【人間らしく家族と一緒に過ごせるような働き方を実現したい】

ただ普通の願いが叶っていない事がわかる。

その日本マクドナルドへの東京地裁判決を受けて、
日本労働弁護団は2月11日に労働弁護団による電話相談

【名ばかり管理職110番】

を実施した。約5時間で130件が寄せられたという。

○ある金型製造の男性(19)は、高卒1年目で管理職にされ、
 基本給13万円に1万円の手当が付き、毎日2時間以上の
 残業代は出ていない。
○あるコンビニ店長(42)は定時にタイムカードを押してから
 残業、休日出勤の際はタイムカード自体は押さずに働いて
 いるが店長になり年収が下がった。
○建設・土木関連の仕事で現場監督をしていたが、月5万円
 の役職手当だけで、月110時間残業し、今年1月に過労が
 原因で自殺した。

と、なんとも悲惨な話である。
マクドナルドやコナカの裁判の前にも、店長クラス
ではないレベルのものは色々とあった。

○ビックカメラ事件(2005年)
大手家電量販店【ビックカメラ(東京都豊島区)】は、
従業員らに対し、不払いになっていた残業代など
約30億円を支払った事を明らかにした。同社を巡っては、
フロア主任ら110人分約1億2700万円の残業代が
支払われなかったとして、東京労働局が先月、同社と
幹部7人を労働基準法違反(割増賃金不払いなど)容疑で
書類送検した。ある従業員の例だと、入社から約1年1ヶ月
で【主任】へと昇格、その途端に【管理監督者】という
位置付けになり残業代が支払われなくなる。【主任】は、
出勤時刻が強制的に毎朝8時と決められ、さらに全ての
一般職を退勤させた後に主任が残りの業務を行わなければ
ならなくなり、1日の労働時間が15〜16時間、月の残業
時間が80〜130時間の長時間残業をしなければならない
状態となる。【主任】には、残業代が出ない代わりに
【役職者残業手当】が月に約6万円程度が支給されたが、
年間を通しての総支給額は一般職であった頃と殆ど変わらず、
残業時間が増加しただけ、実質的な賃金ダウン、未払い
残業代は約400万円にも上った。【主任】の主な業務は、
接客・担当フロア販売員の管理・指導・クレーム対応等で、
もちろん会社の経営方針の決定についての参画はなく、
人事権についてもアルバイトらの人員配置やシフト調整
をする程度で、新たに人員を雇用(または解雇)する
権限等も全く与えられていなかった。出退勤時には
タイムカードの打刻を義務付けられて労働時間の管理を
されており【管理監督者】に該当しないと判断された。

○白木屋事件(2001年)
「白木屋」「魚民」などの居酒屋を経営する【モンテローザ
(本社・東京都武蔵野市)】が神奈川県内の店舗に当時
副店長として勤務していた男性従業員に対し、深夜労働
などによる残業手当約100万円を支払っていなかった、
店舗ごとに売上高に応じた人件費の割合をあらかじめ決め、
売り上げが少ない場合は残業時間を実態より少なく申請
させるなど、残業手当の不払いが常態化、さらに実態を
隠すために残業手当に代わる能力手当を設け、実際の
残業手当分を支払わないように変更していたなどとして、
三鷹労働基準監督署は、同社と大神社長、若尾健次人事部長
を労働基準法違反容疑で東京地検八王子支部に書類送検した。

と経営者側に

【襟を正せ!】

と判決が出ているにもかかわらず、やはり繰り返される・・。
でも、こんな状況に多くの人間が苦しんでいるんだよね・・。
未だに、友人やお客さまと話していても、ある一定のライン
からの【サービス残業】は結構当たり前のようにあるね。
たかが自分の周りだけでもこの有り様ですから、全国と
なったら相当数あるんだろうね・・。
ただ、世の中、100%やる所を70%くらいに抑えて仕事
をしてわざと残業手当を取ろうとする輩もいるんだろう
から難しい所・・。
でも、その数よりも経営者側の長時間労働を暗黙で強制
する形の方が圧倒的に多いだろうけどね・・(^_^;

世の中は【使う側】と【使われる側】しかいない。
双方が満足する関係になれば理想なのだが、いつの時代も
【使う側】はできるだけ賃金(出費)を減らしたい・・
【使われる側】はできるだけ賃金(収入)が欲しい・・
この部分は、やはり幅はあるものの平行線を辿って
しまうんでしょうね・・。
ただ、こうした経営者側の法をうまくかいくぐった
悪質な部分、その結果、従業員の命を削るような
働かせ方に関しては、今後も摘発されないといけない・・。

そして、こんな話を聞けば聞く程、明日の保証は無い
けれども、自分自身の歩幅で色々自分なりに試行錯誤
していける自分の環境に・・
仕事内容に・・本当に幸せを感じる・・そして感謝・・。