「なんでもアリの話」

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 以前にも社会性の発達した虫について話したことがある。そのうちアリは最も身近で最も社会性の優れたものである。また、その種類によって食性や習性が大きく異なるのもアリのみである。それはどことなく人間にも共通するところでもある。アリの特徴の1つめは完全なる分業性である。それは与えられた職務に忠実であるだけではない。彼らにとってはそれは意思によって変えられるものではない。さもあらん、体の構造上そうとしか生きられないのだから。我々が一般的に見掛けるのはハタラキアリであるが、彼らはすべて生殖能力のない女性である。これは生まれつきであり、女王アリがすべての決定権をもつ。つまり、彼女はいわゆる「産み分け」が可能なのである。ハタラキアリはその名のとおり、子作り以外のいっさいを行い、一生を終える。たぶん、その一生に不平不満はないであろう。彼女らにとって女王アリは神に等しい。人だって目の前で奇跡を見れば反抗する気もなくなるだろう。それに人間にはいまだできない「産み分け」を完全にこなすのであれば最初からハタラキアリとしての習性プログラムのみをくみこんでいるかもしれない。
 女王アリはすべてを支配している。自分の次世代を担う若き女王、その配偶者となるオスアリも自らの意思で任意に産み出す。女王アリ候補はハタラキアリとは異なり、ローヤルゼリーを与えられ、羽根もある。オスアリは生殖だけが役目であり、やはり羽根がある。巣別れの季節、若い女王は地上へ向かい、後を若いオスアリが続く。やがて飛び立つ女王アリを追いかけて、何百というオスアリが続く。もちろん、カップルになれるのは一匹だけ。後はあぶれることとなる。よく夜の照明に羽アリがむらがっているのが見られるが、あれこそがあぶれたオスアリの吹き溜まりなのだ。エサをとったり、見つけたりする能力さえもない彼らは2〜3日でひっそりと死んでいく。
 一方、若き女王アリは不要になった羽を落とし、小さな巣をつくり産んだ最初の働きアリを飲まず食わずで自ら育てる。子どもに与えるエサ・自らの活動を支えるエネルギーは羽を動かしていた筋肉である。実にムダがなく、システマティックな体の構造とその活用かと感心するばかりである。
 さて、最初の働きアリが育った後、女王はただ卵を産み分けるだけである。後のすべては働きアリがこなす。女王アリは10年程度生きるらしいが、その後の巣は自然消滅していくのだろう。(Page.2へ続く)

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