「劣等感」

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 客先との打合せ時間より早すぎて時間をつぶすハメになった。ちょっと薄暗い待合所で缶コーヒーを傾ける。はす向かいのおばさんはさっきの喫茶店前で鉢合わせている。初対面の自分に「ね、喫茶店ここよね?締まっているの?」と問い掛ける口調に親しみを感じたから覚えている。
「喫茶店はいつも開いているのよ、でも私がくる時だけど」
「結構利用する人いるんですか?」
「まぁ、この辺じゃ、喫茶店は駅前にしかないし、昼頃は、あぁあたし昼に来ることが多いの、その時は多いわね。あたしは図書館にいたの、で、たまたま来てみたら締まっていたのよ。あなた、何かここに用事があったの?」
「はぁ、仕事の関係で町役場に来たんですが担当者がいなくって待っているんです」
「そぅ、あたしね、ここの食堂?こういうとこ、関係ない人が入ってもいいのかしらって思うのよ。利用している人もほとんど役場の人だし、あの作業服?の人ばかりだもの、何かしら用事があればいいけど、そうそうないじゃない?」
「そうですね、そうそう役場に来ることなんてないですよね。でも関係ないんじゃないですか?自分なんか浪人時代に予備校に行ってましたけど、学食ってあるじゃないですか、あれ大きな予備校ならあるんですよね、そこでいつもご飯食べてましたけど、別に入場制限なんてなかったですよ」
「そう、学食ってあるのよね、あたしは大学なんていったことないけど、知っているわ」「で、周りに大学もあったんですけど、そういうところに食べにいくこともありましたよ。でも最近は大学自体がビルみたいになっていて、入りづらい雰囲気になっていましてね、あれだと学食もなかなか入れないかもしれませんね」
「やっぱりね、なんていうのか大学とかってそれだけで入りづらいじゃない。あたしなんかバカだったし、親もね、勉強なんかしたってしょうがない、働けっていったのよ。実際働いてみれば、大学に行こうが行くまいが関係ないって言われたのよ。お金も問題もあったかもしれないけど。でね、結局アパレルなんかで働いたりしたんだけど、今になってみるとね、結局職を得るには大学なんかで勉強しておくほうが有利なのよ。だって、職安なんか行ってもどんなことを学んだかで大体振り分けられちゃうのよ。あなたはどんな経験がありますか、こういうことはできますか、あぁそうですか、じゃこちらはいかがですかって。やっぱり学問があると選択の幅も広がるのよ。それに世間にいろいろな種類の職業があって、それにつくためにはどういう資格や経験が必要かってことだっけ、結局わからないのよ。大学にいってればそういうことに触れる機会もありそうじゃない?」
「でもどう大学で学んだかで全然違うだろうし、別に大学行かなくたって、例えば放送大学だってあるじゃないですか」
「そんなこと行ってもやっぱり大学行ったほうが有利よ。大体、働いていたときだって思ったことだけど、どうやって仕事ってでてくるものなの?役場の仕事ってどうやって入ってくるものなのよ。そりゃ、役場に就職するような人は大学行ってる人のほうがほとんどでしょう」(Page.2へ続く)

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