| 「素質-1」 |
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| けたたましい電子音と電飾に彩られた閉鎖的な空間、意外なほど人の声というものはしない。もちろん案内係のマイク音は別だが。これだけの人が一様に並んで食い入るように目の前を見続けているのはタバコが気にならない人でも二の足を踏むかもしれない。ジャラジャラいう音が玉が詰まってくるに従い、くぐもったものになり、やがてプラスティックの箱にぶちまけられてガタガタッと鳴る。いつになってもこの音は変わることはない。変わったのは客層と豊富な商品、内装の清潔感だ。所々で言葉にならないため息と舌打ちがもれてくる。何かを振り切るように音をたてて立ち上がり、一直線に出口へ向かう者。残されるのはタバコの吸殻と空箱。勢い余ってライターやジッポーまで置き去りにすることもあるが、それらは大概店員が後片付けを行う前に誰かにそっと握られていく。 銀色で埋まった箱の中身を算出器にかけ、傍らの空箱の上に新しいものを積み重ねてゆく。景品コーナー、カウンターを経由して行き着く先は少し離れた交換所だ。これも以前のような薄暗い路地から表通りにまた、見かけも小ぎれいになっている。殺伐とした雰囲気は以前よりも増しているかもしれない。病院の壁がどんなに白くきれいであっても、いや、より一層かもしだす清潔感と付随するあの雰囲気だ。そこへ連なる人の列は朝から店の前にできる人の列同様、やらない人には異次元の集団だ。雑誌やスポーツ誌を小脇にかかえ、タバコを吸うか、しゃがんで何か食っている。そこには奇妙な連帯感もあるようで、ちょろちょろと話声もある。 彼は今日もやってきた。連日の負けがこんでいる。いつものように台の上に表示されるデータを見通して空いている席から適当に、しかし自分なりに選んだ。タバコを玉の受皿に置いてカードを買いに行く。カードを無造作に挿入、ゲームは始まる。すぐに小デジタルが点滅し、やがて大デジタルが回転し始めた。コンスタントにカード残高は少なくなっていく。打つ動作がほとんどいらない今日のパチンコでは手はハンドルに添えるだけ。初めに玉をはじく強度だけを決めて固定してしまえば、玉が上皿にある限り、勝手に一定のリズムで消費する。金がなくなる計算も容易なものだ。(Page.2へ続く) |
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