「慈梅」

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 撮影が一段落するとみんな獅子の背負った垂を我先にとちぎりはじめた。獅子はみんなで3頭いて、それぞれが緑の模様、赤の模様、白一色の無地のものを背負っている。三種類そろえて家の入り口に飾っておくと家内安全なのだそうだ。上の子供とともにちぎりにかかる。ちぎってみると細かい模様に見えたものは、単に縦に細い線がまばらに入ったものであったが、それが妙に美しく感じられた。ビニール袋いっぱいにとって戻ってきた我々を妻は少し離れたところであきれて見ていたが、眼はやっぱり笑っていた。
 広場の少し奥まったところに舞台があって今度はこちらだという。上手のやや手前ではっぴ姿の女性たちが太鼓をたたく。見物人に混じって同じ衣装の女性が合いの手を入れる。その中を獅子舞、そしてひょっとこ、きつねが次々と現れて踊る。ぐるり囲んだ見物人はおだやかにそれを見つめる。白昼にはある意味似つかわしくないこの演目のこの場のマッチングは心地よいものであった。観客も一体となったコラボレーションがそこにあった。目を閉じると傍らの合いの手と太鼓のリズムが、潮騒のように行っては返し、行っては返してくる。間違いなくあの場は温かった。終わったあと、太鼓担当の女性たちの笑顔も撮影会もやわらかく温かった。
 「よかったね」
妻の一言がすべてを示していた。
 梅の中をミニSLの線路が敷かれている。今日は故障で動いていない。子供に説明すると残念そうに線路のどんつきにある車庫の前でしばらくじっとしていたが、やがて忘れたように自らSLとなって線路の上を行ったりきたりした。足元では細かくなった石炭のかけらたちが日をうけてキラキラと輝いていた。
 夕暮れが近づき、出店もしまい始める。
 行き交う人々の足取りもやや速く、我々も出口に向かう。そこでは高校生だろうか、はっぴ姿と普段着がじゃれあって笑っていた。先に配布された園内案内のチラシには青年部の文字があった。
 あの模擬店のような出店も、心地よい対応も、舞台の演目や司会進行に至るまで、すべては地元の人々の手によるものだった。その歓迎ぶり、ともに楽しもうとする雰囲気に大きくうなづき、その場を後にした。

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作:shun

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