「慈梅」

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 強い風に吹き寄せられるように梅を観にいった。低山が程近くある丘陵部である。近づくにつれて梅があちらこちらと庭木や街路樹に目立ちはじめる。吹き払われたか、時期が早かったか、案外に上にも下にも花は少なかった。風は強くて梅はなしとなれば帰りたくなるところだが、子供たちの気晴らしには何がなくても広い場所があればいいのだ。公園の散策と考えた。入り口左手には出店が並ぶ。商売っけのある出店は景気よく客引きをするものだ。祭りのときなどは人々の気分高揚をさらにあおるように声をかけていく。みんなそれを楽しめる程度ならばいいのだが、押し付けがましさが見えると興ざめる。
 売り子は一声かけはするものの、しつこくなくカラッと通していく。ベンチに腰掛け、名物であろう軽く揚げたサツマイモのスティックをつまむ。
 「さっさと食べてしまえよ」
 子供にいいたい心の声も一緒に飲み込む。ここ一ヶ月くらいは出かけることはあっても子供を自由にあそばすということはなかった。
 遠めに吹きさらす風にさらわれながらもマイクの声が聞こえてくる。中央広場で獅子舞と顔を四角の箱で覆った小さめの和装の女性が軽く踊り、はっぴ姿の若者が横笛を吹いていた。それらの動きには統一感がなく、ごちゃついて見えた。獅子は頭から背中にかけて、しめ縄にぶら下がっている垂の長いものを何束も背負っている。踊りがすむと女性は顔の正面部分を開放し、しきりとあおいでいた。これほど強く風が吹いていても顔を覆ったこの衣装はよほど暑いらしい。紅潮したその顔はまぎれもなくにこやかな子供のものであった。
 「みなさん、記念撮影をどうぞ」
 その気軽いマイクの声を合図にとりまいて見ていた人たちが近寄っていく。上の子ははにかんで行きたがらないので、人見知りをしない下の子を連れていったが、近づいたとたん足をバタつかせて、いやいやと身をよじり泣き出した。キョトンとした眼でみているときとの違いにちょっと戸惑い、でも周りの温かい目から笑ってしまった。(Page.2へ続く)

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