「マイルーム」

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取り繕うのがニガテな私は気にならない。他人がそれを見てどう思うのかは考えたくはないけど。高校のころだったか、友人Nの部屋に遊びに行ったことがあるが、そのときの印象はいまだに残っている。とにかくキレイなものだった。全てがあるべきところに納まってまさにパーフェクト。一目見ただけでチリも落ちていないであろうことが感じられる部屋であった。こうなるとその部屋のものに触れることに抵抗を感じてしまい、どう振舞っていいのかわからなくなり、奇妙な居心地の悪さを感じるのみであった。おまけに食事を出された際にテーブルマナーまで教授されることとなった。気心の知れた仲間であったから、ここで恥をかいた気分にはならなかったし、テーブルマナーはその後たいへん役にたっているので感謝するばかりである。もう一人の親友Aの部屋にもいったことがあるが、Nほどではないにしてもやはり整頓された部屋であった。物がある印象はAの方が強く、実際天体望遠鏡がきちんと飾られていて、ホコリも見られなかったのを覚えている。
  その後私は浪人生活をして、この二人から参考書を譲り受けるのだが、その参考書にもそれぞれの個性が出ていた。Nから手に入れた数学の参考書は単元ごとに切り離されていた。また、蛍光ペン等でつけられたしるしはついぞ見ることはなかった。きれいに書物を扱い、しかし目的のためには最善と思われることを実行する、そんな彼の性格がかいま見れておおいに納得したものだ。Aの化学の参考書は表紙に自分のイニシャルをデザインしたスタンプが押されていた。また、けっして多くはないが所々にひかれた蛍光ペンのアンダーラインは定規の痕跡が赤裸々に残っていた。几帳面で所有するものに愛着を感じる彼の性格がこれまた見事に現れていた。
  しかるに自分の参考書を見直してみると、やたらにアンダーラインがしかも鉛筆で無造作に引かれている。所々に理解を深めるための書き込みが自分だけの理論のようになされている。そして、それらは今でも本棚に眠ることなく鎮座している。

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作:shun

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