| 「めいわくなんだよ」 |
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| 電車の中は無法地帯だ。子供の時分、電車の中で床に座りこんでいるのは不良がかった奴くらいのものだったが、最近では老若男女を問わず座り込む人が実に多い。箱型の大きな荷物に腰掛けるようにしている人もいる。人目はばからぬ携帯電話使用通話は目立たなくなった。これは歓迎すべきことだが、かわりに無言でひたすら携帯を操る人が増えた。なんのことはない、わかりやすい音声は自粛したものの携帯使用度は増えているのだ。たしかにペースメーカーなど使用している人からすれば迷惑どころか危険きわまりない行為ではある。しかし、携帯の発する電波の影響はたかだか20cm四方程度なのだ。スーツの胸ポケットにでも入れていない限り、影響はないだろう。もっとも背負ったリュックに入れているなら話は別だが、込み合った電車の中でのうのうとリュックを背負っている奴など(けっこういるものだが)蹴飛ばしても差し支えないと思っている。 満員電車というやつは、パーソナルスペースを無視するものなので、たいした確率でイザコザが起こる。だが、一方でみんなが同じような状況にあることからある種の抑止力が働くのだろうか。たとえ、電車が揺れて押しつぶされそうになったり、もしくは足を踏まれたりしてもそれはみんなお互い様というわけだ、存外みんな何も言わない。もちろん、押してきた方向をにらめつけたり、度外れに大きな声で文句をいう輩もいる。そしてここが重要な点だが、そういう輩はその鼻につく行為以前にすでに人に迷惑をかけていることが多いのだ。雨の降る日に雑踏の中をカサの中央部を持って前後に勢いよく振りながら歩く奴や、カサをたたまずに満員電車に乗り込む奴、満員でもけっして新聞をたたまない奴がそれだ。 最近私に起こった不愉快な出来事は次のようなものだ。その日の夕方、在来線の急行電車の中で私は扉近くの手すりに身を寄せるようにして本を読みながら立っていた。座席は空いてはいないものの混雑はしていなかった。ある駅で初老の男性が入口から私を押しのけるように私の前に乗り込んだ。もちろん後ろには十分スペースが残っているし、扉そのものだって十分に空いているところがあるのに、である。私は反射的に後ろに下がってしまったが自主的というよりはムリヤリといった感じであった。もちろんこの時点は私は十分に腹が立っていた。本当に面倒を避けるならばこの時点で別の車両にいくとか、十分に距離をとって近づかないべきであった。しかし、私はわざとその押しのけられた場所にそのまま立ち続けた。ほとんど密着せんばかりである。(Page.2へ続く) |
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