「証し」

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 太陽が上る。地上も海もその太古から間断なく繰り返される放射によって少しずつ暖められる。朝、多くのものが目覚める。食事をとるものもあれば、少しでも眠りを得ようとするものもある。
 いつものとおり、顔を洗い、ひげをあたり、電車のタイムテーブルにおされるように食事を流し込み、そしていつものように家を出る。駅へ向かうその道は、いつものとおり、小走りとゆっくりと足を引きずるような歩みが交差する。何の変化も生み出さない交差、ねじれの位置か。駅前では、選挙前だけ候補者がいつものティッシュくばりのあんちゃんと入れ替わる。存在の意味は変わらない。電車内のすし詰め状態は人の圧力とウォークマンから洩れるリズム、周りを振り返らないおしゃべりが充満している。少し暑くなった。
 駅から放射状に広がる人の群れ、どの方向にも先行する人がいて、たぶん後ろにもつながっている。ひとつのビルに数珠つなぎで流れ込む、アリの行列ほどの統一感。周りを見つめ眺めても、いつものメンツ、いつもの時間、似たような仕事、似たようなつらかり具合。チャイムがなり、また動き出す。部屋を出て、店に行き、また帰ってくる。胃袋は本当に食事に満足したのだろうか。いつもの午後、眠気の差し込む頻度が高くなった。夕方、日はまだ高くテンションは低い。モチベーションも低い。夕暮れの中、駅に向かう。朝との違いは方向と周りの明るさ。ムリに明るく見せている。居酒屋、レストラン、バー、飲食店が活気づく。同じ店に同じ人。頼むもの、食べる人、払うお金みんな同じ。買っているのは自分の時間。
 電車の中、すし詰め。不愉快な顔、おこるイザコザ、当事者以外は関与しない、できない、する気がない。無意識に意識的な沈黙、ここにあり。部屋の前でカギをまさぐり、3秒後にはもういない。同じドア、同じ部屋、表札だけは異なるが、書いてなければ同じこと。風呂に入り、あがり、酒を飲み、寝床に入る。目を閉じる。考える。希望、いやいや、楽しいこと?いやいや、明日のこと?いやいや・・・・。
(Page.2へ続く)

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