「追憶-4」

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「そう、そうなのね。わかっていたつもりなんだけど今改めて確認できたわ」
彼女はきびすをかえすとゆっくりとドアを開けた。ドアに半分姿を隠しながら、
「これからおばあちゃんのところに行きなさい。わたしは何も知らないし、会わなかったことにするから」
ドアが閉まる前もう一度、顔だけを出してにっこり笑った。
 しばらくそのままの姿勢でドア越しに何かを見通しているかのようにしていたが、自転車にまたがって走り出した。その背後で二階から見下ろすまなざしがあったが、彼はふりかえることもなく走り去った。お互いにわかっていたのだ。その瞬間お互いがお互いの行いについて確認の必要はなかった。お互いが与え合った何かを感じながら二人は急速に離れていった。
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「あれあれ、ずいぶん早いお越しだね」
祖母はいつもどおりにかっぼう着姿でいつものようににこやかにでてきた。
「おはよう、おばあちゃん上がってもいい?」
「何の遠慮があるものかね、何か飲むかい?」
「ん〜っオレンジジュースないかな」
「確か一本冷蔵庫にあったよ、ところで親にはちゃんと話してでてきたんだろうね」
「言ったってわかるもんか、勝手に出て来たんだよ」
「おやおや、それじゃ電話しないとね、自分でしなよ自分で・・・ねぇ」
「・・・・」
すでに床に伏せっていた彼を見て、祖母は自分で電話をまわしはじめた。彼は限りなく健康的で甘美な世界に落ち込んでいったが、その顔はちょっぴり何かを失って大きな何かをつかんだ感触に笑っていた。

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作:shun

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