「試験」

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 目の前には白紙があった。どこにでもあるようなA4版のそれには問題が5問書かれていた。真剣にその意味するところをイメージして解口を探す・・・。何かとらえどころのない、万華鏡の世界に手を突っ込んで探し物をしているような気分だ。・・・困った、しかしなんで社会人にもなって数学・物理の問題を解かにゃあならんのだ、もう学生時代に十分苦しめてくれたのだから、もうおれを開放してくれ!そんな状況をあざ笑うかのように無常にも時間だけは過ぎてゆく。ものすごい焦燥感にかられ、全身の毛が逆立つような刺激とそれが瞬時に冷めるギャップ、心臓にすごく効く。いったいこんな感覚を何度味わえばいいのだ。なんのことはない、どんな薬物を摂取するよりもこの刺激を与えてみればいいのだ、ストレスで確実に衰弱してゆく。生物が一生のうちで心臓が打ち鳴らす鼓動数は決まっているというが、いったいどれくらいストックがあるのだろう。こんなことで昏倒したら・・・まちがいなく新聞ネタにされる、そんなことは真っ平ごめんだ!
 元来あきらめが悪いのがいけないのだ。どんなにその試験が自分にとって手も足もでない難解なものであっても、なんとかなるんではないかというかすかな希望がある限り、いやそんなカッコいいものではない。何もできないで降参するのがいやなのだ。見苦しくても、どんな屁理屈をつけても、何かしら用紙に書き込んで努力したツメ跡を残す。いつでもそうしてきた、今度もそうだ、そう簡単には諦めない。あらためて時計を確認する。試験も全部完璧にやりとげようとすると、時間がやたらに気になって焦りが生じてミスするのが常だが、一矢報いようと考えるとまだまだ時間は残されている。大丈夫、まだ遅すぎるというにはあまりにも早すぎる。
(Page.2へ続く)

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