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おくりびと【ネタバレご注意!】

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遅ればせながらTVでやっと観た【おくりびと】・・(笑)
なんでも、正月にこんな映画やりやがって!って事で、
ゴールデンタイムにもかかわらず、視聴率は【3.4%】
だったとか・・(爆)●〜*
でも、自分は観た事無かったので、しっかり録画して
おきましたよ!って事で・・(^-^;(笑)

【モントリオール世界映画祭グランプリ受賞】という
冠付きなのだが、個人的な先入観としては、いわゆる
【受賞作品】というのでおもしろかった・・というのが
ない・・(^-^;(笑)
よって、結構、小難しかったり堅苦しかったりする
のかな?という感じで、期待せずに観たのだが、
以外や以外、随所に笑いをもたらすユーモアもあり、
モッくん(本木雅弘)の演技の良さもさることながら
山崎努、吉行和子、余貴美子、笹野高史・・と脇を
固めるベテラン俳優陣、久石譲の音楽効果も手伝い、
秀作でございました・・(笑)

改めて書くまでもないが、山形の美しい風景や色の
綺麗さに心が洗われる中、【納棺師】の目線で誰もが
避けて通れない【人の死】を通して【死への尊厳】
と【生】の素晴らしさを描いております・・。
こうしたゆっくりとした映画は日本映画の得意とする
ところ・・観ていて疲れずリラクゼーション感すら
ありました・・。

そもそも、恥ずかしながら

【納棺師】

という仕事があるという事を、自分はこの映画を観て
初めて知りました・・(^-^;(笑)
だって、こうした事は葬儀屋さんが一連の流れの中の
ひとつの仕事で普通にやっている・・自分に例える
ならば、カットとパーマが別々な職種で分担されて
いないのと同じみたいな感じでいましたから・・(^-^;(笑)

その【納棺師】のお仕事・・自分の仕事もそうですが、
技術職というのは、どんな仕事でも、その行程には
ひとつひとつにそれぞれの意味がある・・。
遺体に死に装束を着せるまでの丁寧な体の使い方、
動き・・死を死と思わせないような化粧を丁寧に施し、
さながら崇高な儀式、崇高な芸術とも呼べる仕事で、
あの世へ送り出す・・。
それを丁寧に入念に厳かに作業のひとつひとつが
描かれており、作業中の音ですら崇高さを感じるだけ
でなく、改めて

【人間の死】

というものを真正面から考えさせられる・・。

そんな崇高さを見事に映し出している作品だが、
強いて難点を上げるならば、

【仕事のイメージが綺麗すぎる・・】

と感じる点・・現実、遺体はこんなに綺麗ではないはず
だし、もっと吐きたくなるような遺体の方が多いはず・・。
病死ならガリガリだったり、体臭がすごかったり、自殺
ならどのパターンでも綺麗な遺体ではない・・。
【納棺師】に頼むという時点できれいな遺体が条件なの
かもしれないけど・・もちろん、汚い遺体を映像にして
公開できないだとか、作品の雰囲気を壊す・・みたいな
ある種の御都合主義ではあるのだろうけど【汚い】と
いう部分もリアリティとして存在させるべき・・。
そして、そのリアリティを描かない割に極端にそれを
強烈に

【汚い】

と罵る(妻の美香<広末涼子>、親友の山下<杉本哲太>)と

【差別的な人間が身近に対比して極端に構成されている】

という点・・。
普通なら映画として当たり前の対比だから、まあまあまあ・・
となるのだが、風景や仕事、大悟(本木雅弘)の凛とした
演技が想像以上に清楚で綺麗すぎるために、そこがやけに
目立ってしまうんだよなぁ・・。
しかも、妻・美香が仕事を聞いて、すぐさまに

【汚らわしい】

とまで言い放つのは展開として急すぎるよな・・(笑)
しかも【納棺師】が誰かがやらなくてはいけない必要な
仕事という部分のフォローもない・・(笑)
もちろん、映画としての限られた短い時間の中でのメリハリ
としては仕方のないところなのかもしれないが・・(^-^;

そして、仕事だけでなく、

【環境までもが綺麗すぎる・・】

という点・・。
手に職を持った理解ある妻、親は他界、自由に使える実家・・
とありえない位にうまく綺麗に環境が整っている・・(笑)

【映画なんだから・・(笑)】

ってことなんでしょうけれども、この映画が無菌培養された
ような崇高で優しい気持ちになる素晴らしい作品である事は
否定しないんだが、同時に人の死を通じて人生の機微を描く
ならば【汚い】という部分が【汚らわしい】と罵る極端さ
だけでない【汚い】部分を映し出す目配せが欲しかった・・
と個人的には思うのです・・。

しかし、こうした【死】というものを真正面から感じる事が
できたのだから、これを機に、もっと【死】について論議が
起こればいいのにね・・。
例えば根本的に【死】というのは誰のものなのか?
こうして残された者が満足する為のものなのか?
本人が満足する【死】をこの世ではなぜ選ぶ事が出来ない
のか?などなど・・日本ではタブーなのか?そうした論議
が出ても来ない。良い機会だと思うだけどな・・。
でも、論議の部分はともかく、映画としては心洗われる
なかなかの秀作でした!(゚-゚)b