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東シナ海ガス田の共同開発というカード

日中両政府が6月18日、東シナ海ガス田の共同開発に
合意した。

【両国の歩み寄りで長年の懸案に一区切りがついた】

などと好意的に報道されて、福田内閣の支持率が少し
上がっているが、個人的には今後の中国の展開の予測
から、今後不利益を残すような、日本に不利な合意と
なったと考える。(ちょっと有益もあるが・・(笑))
自民党の中川昭一元政調会長は6月19日、CS番組の
収録で、日中両政府が合意した東シナ海ガス田の
共同開発の内容について、

【本質論としては何の前進にもなっていない。中国の
 法律の下、中国の企業に出資するのであって、
 明治時代の不平等条約みたいなものだ】

と述べ、批判した。
では、言わんとしている事はどういう事なのか?
自分なりに説いてみたい。
まず、7つのガス田のうち、日本側が共同開発を
求めた中間線付近のガス田は4か所。
今回合意したのは、さらにその4か所のうちの

【白樺(中国名・春暁)】

【翌檜(あすなろ)(中国名・龍井)】

の2カ所のみだ。
あれだけ頑なだった中国側がいとも簡単に合意した。
中国が自国に不利になるような条件で合意をする訳
がないですから、必ず思惑がある。
その辺の事はあとで述べるとして、まず、いかにも
平等っぽい【出資比率に応じて利益を配分】という
合意内容・・。
これ、簡単にどういう事なのか?というと、地下に
眠る実際のガスの埋蔵量が、例えば中間線をまたいで
地下でガス田がつながっていたとした場合で考えて
みた時、仮にわかりやすく日本側に8割、中国側に2割
の割合で埋蔵していたとしよう。
本来なら8割が日本のもの、2割が中国のものとなる。
しかし、出資配分が【5:5】であれば、利益配分も
【5:5】となってしまうという合意なのである。
しかし、今回【白樺】への日本の出資は25%を
目指すとありましたから、日本の得られる物資は
多くても25%・・。
これを平等な合意だと思う方がどうかしている。
本当に対等になるためには、実際には日本側も
中間線付近の日本側海域で【試掘・採掘】を実行し、
中国に出資させてはじめて平等だ。

ただ、実は東シナ海の採掘可能な天然ガスの埋蔵量は、
約1.8億バレル(石油に換算して)とみられている
らしく、日本の石油&ガスの消費量の約1ヶ月分に
過ぎず、それほど多くはない事がわかっているため、
日本側は、金を掛けてまで日本へ持ち帰る事は考えて
いないそうで、全て中国側へ売却し、売却益を見込む
方針だそうだ。

まあ、あんな海上から日本側にパイプライン設置して
とか、原油使ってタンカーで運んでなんてやってたら
確かにコスト的に釣り合わないよな・・(笑)
しかし、実際にガスの価格がどうなるのか?までは
話合われていないんじゃないかと思うんだよね・・(´ヘ`;)
実際、中国は国内原油価格などについては原油高騰分
を入れず【採掘原価】としている。
となると、前述の中川氏の発言から【中国の法律で】
いう所を読み取ると、東シナ海のガスの価格は
【採掘原価】となっているのではないか?と予測される。
その場合は日本はほとんど売却益など無いに等しい・・。
現実的に日本の立場で考えたら、日本人なら誰でも
日本と中国の物価の格差が大きいのはわかっているだろう。
という事は、中国に送られるガスの量を中国側と日本側に
分けて考え、さらに日本側の取り分には国際取引価格を
適用しなければ事業になりえないと思うのだが、今回の
合意にその辺の事がどこまで盛り込まれているのか?

しかし、仮にそのような事も盛り込まれ日本にとって
バラ色の内容だったとしても、今の原油高などを
ふまえるとそれは間違いなくお金をかけた割に、採算は
合わないだろう・・。
また怖いのは、近くにうまい事に尖閣諸島がある。
そうなると、日本はガス田開発では、何の技術も無い
ため、日本は金だけ出して、後は中国まかせになる
可能性も高い・・。
で、中国が近くの尖閣諸島に共同開発の為の施設を
勝手に作ちゃったりして結局、尖閣諸島が中国に
実行支配されるなんてシナリオだけはやめてもらいたい。

いずれにしても、一番大切な事は、

日本政府が【日本の主権】や【海洋権益】を本気で
守ろうとしているのか?

なのである。いつも日本は他国の事を考え平和的に
と考えるが、その結果、日本という国はどんな事に
なっているのか?
北方領土、竹島、尖閣諸島、ガス田まで奪われ、
さらに自国の教科書、靖国などの追悼の方式で
文句を言われ、従軍慰安婦で証拠もない先祖を
犯罪者にし、我々の税金をODAとして渡すが他国の
軍事費に使われ、結果、日本が色々な軍備を我々の
税金で整えて差し上げた・・という【お人好し国家】も
いいかげんしろ!という昨今だ。

日本が現在の国際法においての基準である【排他的
経済水域(EEZ)】の境界として主張する日中中間線も、
中国は1970年代頃までの国際法上の解釈に基づく
大陸棚の先端からの中間線【沖縄トラフ】を主張して
いるが、これは今では国際的には通用しない主張だ。
そんなに大きな声をあげるのならば、この問題に
おける国際司法裁判所による調停を中国は拒み続ける
必要はない。
という事は、中国はきちんと承知しているのだ。
その証拠に中国は、日本の主張する【排他的経済水域
(EEZ)】の境界線を境にして、中国側にちゃんと
ガス田を作っている。

また、2000年12月、ベトナム東部のトンキン湾の
中越係争海域で、現在の中国と同じようにベトナム
が大陸棚が延びる海南島付近までを自国の海だ!と主張。
それに対し、中国は国際判例を根拠に、現在日本が
主張している事と全く同じ排他的経済水域の中間線を
主張し、中国の言い分が通り、中間線近くを境界線
とする事で両国が合意しているのだ。

このように、どこからみても【境界線においての
意見の相違】など無いのだ。

ただ、日本という国は【すぐに謝罪してお金を出す国】
である事を中国は良く知っている。
だから、ここだけに限らず、何の問題において、大阪人
の値引きと一緒で、ひとまず言ってみてるのだ。
日本は常任員理事国になりたいだとか、アジアで主権を
取りたいだとか、色々な背景があるので、中国のように
メチャクチャな態度に出られない。
さながら、大阪人と販売店の対決みたいなものだ。
そんな日本の様子をみて、もっと攻め込めば日本に
政治決着として、従軍慰安婦問題じゃないが、やって
いなくても謝罪させる事ができたように、日本が根負け
する事をしたたかに外交として狙っているだけなのである。

とは言うものの、後に述べると書いた中国の思惑・・
これは、中国は公害問題から省エネルギー問題、環境
問題・・と山積みの難題を抱えている中、日本の
省エネルギー技術、環境技術が絶対的に必要で、
日本の存在なくして、この先自国が立ち行かない事
を自覚し、いかに追い詰められているか?をわかっ
いるのは実は中国自身である。
どうしても、ここの部分では日本と手を組まないと
いけない事はわかっている。
ここが欲しいから今回は大幅に歩み寄って、カード
を切ってきた。
しかも、この歩み寄りにより、あれだけ頑なに日中
中間線を認めなかった中国がここを共同開発にした
という事で、中国が日本の日中中間線を認めた事と
同じであり、日中中間線は棚上げとされたと報道
されているが、実際には解決したといっても良いだろう・・。
ただ、中国内の軍部や国内世論を押さえきれなくなる
可能性があるので、表面上は永遠に双方の主張は平行線
であると予測されるけどね。
そこにおいては、向こうから妥協してきたにしても
日本の成果である。
中間線の日本側海域には日本の年間需要の1.6年分、
石油換算で約32.6億バレルの原油と天然ガスが眠って
いるとされている。まだ始まったばかりである。
今後は一切妥協する必要はない。中国側からの譲歩
は始まったばかりである。
中国は国内法の領海法で、1992年に尖閣諸島を勝手
に自国領土と明記した。
遅すぎる日本も、一応、危機感故にやっと重い腰を
上げ、2007年4月に【排他的経済水域(EEZ)】内
での試掘を可能にする法律と海洋政策強化のための
海洋基本法が成立している。
このように、ようやく中国に追いついた感じで展開
している日本の外交も今後は、より【戦略的外交】
として、じっくりと腰を据えて、中国の動きをどんどん
封じ込むだけでなく、中国の譲歩をどんどんと引き出す
べきである・・。

ただ・・また【パンダ外交】レベルじゃ困る訳で、
日本政府が本気で日本という国を守ろうとしているのか?
これから大きく問われる。