「はくなよ」

 この時期を迎えてしまった。そう、忘年会シーズンである。気のあった仲間と楽しい時間を過ごす、大変に結構な話しである。私も最も大事にしたい時間だし、それ自体を否定する気分はさらさらない。ただ、ちょっとばかりハメを外してしまい、車中かまわずデカい声でしゃべったり、リバースするのは問題である。大変に周りが迷惑する。
 こちらが仕事帰りで(かなりの頻度であるが)疲れた状態でいるときなど最悪である。たまに絡んでくるヤカラもいるが、大抵の場合、何かしら自分の世界に入り込んでいれば問題はない。要は相手にしないことである。「目があう」のは大変に危険なことだが、何、目を閉じていればよい。ついでに音楽でも聞いていれば、雑音も気にならない。
 そう思っていたのだが、この時期は突然のリバースの危険がある。オチオチ、目を閉じてもいられないのである。もっとも満員の終電で逃げ場などなく、危険人物を避けて、ポジションを確保するのが肝要である。つまり、電車に乗りこむ前にチェックするのである。陽気にしゃべっているのは問題ない。本を読んだり、携帯をいじくっているのも、余裕である。妙に黙り込んでいるヤツ、吊り革や手すりに身をまかせているヤツ、要注意である。特に出入口に近いところはヤバい。自分の経験からわかることだが、気分の悪いときには動く余裕がないので、どうしても出入口に近いところにいることになる。万が一の場合、なるべく周りに迷惑をかけたくないという気持ちは誰にでもあるのであろうか。
 このあいだは、11:00過ぎの新宿駅で、ひざまずき、まるでだれかにザンゲしているかの様子で、吐瀉物を前に、呆然としている人がいた。年齢にして30前後といったところか、もちろん、彼の周り5m以内に人影はなかった。また、普通に自分の後ろで、電車の座席に腰掛けていた50過ぎのオッサンがいきなり吐いて、自分の作業ズボンにその飛沫が少々かかったこともあった。吐瀉物はその内容や量にかかわらず、ひどい臭いがする。自分が気分悪いわけでもなく、私鉄一本分歩いて家に帰ったのはこのときだけである。もちろん、ズボンは家に帰ったと同時にビニール袋行きで廃棄処分である。本当は吐いたオッサンに請求したい気分だが、近寄りたくないという気持ちのほうが強かった。
 自分は幸いにして車中でのリバースはない。以前は気持ちよく家に帰ってきて玄関で寝ていて、ほどよくカラダが冷えた2h後に・・・・・、というのはある。おかげでその後はワインをバカ飲みできなくなった。車中でも気分がわるいことはある。ただ、最近は飲み過ぎないようにしていることと、気分がわるければ例え終電であっても乗らないようにしている。どうも、自己抑制が強すぎて、少し気分がわるいくらいでも乗らないようになっているようである。おかげでさらに許容量が小さくなった。よっぱらいウォーキングは最初停滞した気分ではあるのだが、歩いているうちに気分も高揚して、家に着く頃には酔いなど覚めているものだ。ちょうど学生の時、火照った体で自転車をこぎ、顔に風を感じるようなものだ。
 理性が飛ぶまで飲んだ経験はないので、「飲める人は楽しいんだろうな」とは思う。また、量が少ないということはワリカン負けしているということでもある。ひたすら食べるという手もあるが、少しでも飲みながらではたかがしれている。しかし、本来そういったチマチマしたことを考えないで楽しむのが、飲み会であるのなら、本当に楽しんでいないのかもしれない。
 学生時代、飲み会が長引いて泊まり、けれどそれほど飲んでいないので、朝普通に目覚めると誰も起きていない。ヒマつぶしの小説でもあれば別だがそうでなければ散歩にでも行くしかない。しかし周りはよく知った場所だ。行くところなどありはしない。大体、ハタチそこそこの若造が一人で散歩なんかするわけがない。結局、早めに適当な理由をつけて退散するのだが、帰りの電車がむなしさとホッとした感じが半々であったことを覚えている。
 最近、長い飲み会に参加するようになったが、人と人とのつながりを大事にしたくなったのか、それほど苦痛ではなくなった。ただ、夜遅いというか朝までなので、翌日はなんとも眠く、使いものにならない。今後はなんらかの対処が必要だろう。そして、他人のリバースに会わない方法としては10:00以降、電車に乗らないこと、これにつきる。

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作:shun

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