| 「ある作家の話を26年間も読み続けるということ」 |
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| 一人の作家の作品を26年間も読み続けている。最初に読んだのは小学校高学年の頃だ。それまでも少年少女向きの本はそこそこ読んでいて、正直その手の本は飽きていた。いわゆる名作といわれるものも読んだし、怪盗ルパンやシャーロック・ホームズ、江戸川乱歩といったものはワンパターンな作りを感じながらも、ストーリーに引き込まれていく快感にどっぷりハマっていた。先を先をと求める一方、「シリーズが終わったどうしよう」という気持ちになった。明日からヒマじゃないか? 当時、納屋にはジイちゃんの遺品やらいろいろなものが散乱しており、そんな中にはほこりまみれの乱歩の文庫もあった。ちょっとオトナ向けの描写で、ちゃちな挿絵があり、文体も昔風であったのを覚えている。 この時期に肺炎で二回、10日ずつ入院したが、病室で当時ビデオもなく、家族がカセットテープに吹き込んでくれたテレビ番組を、病室でイヤホンで繰り返し聴いていたものだ。点滴は2、3日で外れたし、同じ病室の子どもたちと話しもしたが物足りなく、遊戯室なんかも全然惹かれなかった。結局、親に本を無心し、いくらでも読める環境に狂喜し、ベッドの脇に本が積まれていったのである。今、自分が親になって我が子がかつての自分のようだったなら、嬉しい反面困ったことだろう。もちろん、本の数には限りがある。必然、同じものを多分5回ぐらいは読んだのだろうが、いい加減飽きても仕方なかろう。 折しも季節は夏で2回ある移動教室も1回は休んでいたが、あまり悲しくはなかった。 そうして、退院した後にある作家の本に出会うことになる。最初にそれを読んでいたのは、デキのよい友人であった。彼は勉強もできたけど、月曜販売の少年漫画を金曜日に購入し、絵画を習い、当時の自分がしなかったようなことを先んじてやっていた。 当時、文庫本は\340で手に入ったが、今の本とは大違いで細かい字がびっしりと300ページの紙面を埋めていた。今の本は内容はともかくとしてフォントがデカい故にあまり読んだ気がしない。最初は興味半分・対抗心半分で読んだと思う。しかし、今まで読んだことのないSF、現代ではない幻想の世界、妙な怪物もいる環境で、自分よりも少しだけ年長の魅力的な主人公たちが紡ぐ冒険、とくれば惹かれたのもムリはなかろう。また挿し絵が骨太な雄々しい感じで惹かれたのも事実である。 当時から作家は100巻完結を明言しており、まだ10巻程度しか出版されていなかった。読み慣れていないこともあってなかなかペースは上がらなかったが、ストーリーに引き込まれるにつれて、新作を待つようになるのに時間はかからなかった。作家はそのシリーズだけを書いていたわけではない。ジャンルを超えて書いていたし、音楽や演劇もやって、テレビにまで出演していた。そのため、発刊ペースが遅れぎみのこともあった。それでも他の作家に比べればメチャクチャ早かったのだが。 開けっぴろげで宣伝くさい近況を綴った作者あとがきは、キライではなかったが、時に「早く書けよ」と思ったこともある。内容もヤケに説明が饒舌だったり、ストーリーが停滞したりして、閉口することもあった。事実、新作が出てもしばらく買わず、「読むのやめっか」と思ったこともある。意識していたのだろうけど、そういった中だるみの、ストーリー展開の緩急は長編小説には必要だろうし、その世界のリアルに貢献していたようだ。 いつしか当初予定の100巻は過ぎ、おそらくは全体の半分程度なのではないかという進捗状況に、一生楽しめると勘違いしていた。そんな折に重篤な病気になり、今後はやりたいことだけやる宣言をした作家の姿から、これでまた楽しめると気楽に考えていた自分がいた。どんなことがあっても、ここまで広がった世界が唐突に終わるわけがないと思っていたのだ。 そこに突然の訃報報道である。何か感じていたのか、今年度発刊予定分はすでに書きあげていたようだが、もちろん物語が終わるわけではない。今までも「こうなるんじゃないか」という予測はたってもそのとおりにならないことが多かったことから、未完に終わったのは本当に残念でしかたない。 普段から節制し、その小説を産み出すことだけ考え行動していればひょっとしたら作品は完全に終了できたかもしれない。それによって、読者は大いに満たされ、さらに多くを望んだかもしれない。けれども作家はそれをしなかった。何がそのイマジネーションの源泉となっていたのかわからない以上、一見関係のないようなその他の創作活動があって、この作品が産み出されてきたかもしれないのだ。 この作家の作品はいずれも完結しない。それは確かで仕方のないことだ。数々の謎が残されるのは大変残念だが、もうそれでいい。一番残念に思っているのは当の本人であろうし。作家の読者なら、みんなわかっているとは思うが、この続きを書ける者はいない。おせっかいな誰かが創作ノートのようなものを題材に書こうとしても、誰も認めないことだろう。 最後に言いたい。 「明日から、どうすりゃいいんだ?ヒマじゃないか!」 |
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作:shun | |
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