| 「ある晴れた昼時に親戚の家でメシをご馳走になるということ(第1話)」 |
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| 親戚に印鑑を借りた、というと大層な金が動く印象になるがそんな話ではない。路上で警察に咎められることなく合法的に商売するためには、道路使用許可というものを警察からのお墨付きを貰う必要がある。目的、期間、場所、通行上問題のない安全対策、責任の所在などが必要で、結構面倒くさい。実際、路上の仕事なんて面倒なだけだと考えていて、なんとか10年間避けてきたのだが今回はダメだった。書類作成するにあたって現地に何度も足を運び、表には見えない埋設物に思いを寄せる。はたから見れば同じ場所でメジャーを何度もあて、頭上の電線を眺め、放浪している姿は奇異に見えるに違いない。事前に周辺住民に説明するのだが「作業を心よく思っている人などいるのであろうか?」と考えてしまう程の仕打ちを受けることもしばしばである。 そんなこんなで書類を警察に出してみると、こちらも最初からそっけない。書類のチェック者がいい意味でベテラン、悪く言えばロートルな場合、嫌がらせのようにどう見てもヒマなクセに色々とケチをつける。丁寧に教えてくれるにしても、口の聞き方というものがあるだろう。あれで仲間には異常に態度が変わるのは、仲間意識の強い集団で過ごし、権威があると勘違いしたせいだろう。 「引退したら家族は大変だろうな」提出時にそんな態度をとられたら、許可書の受理時には「なるべく何事もないように」と願うわけだが、しっかりと認印を忘れてしまった。TPOに応じてカバンを変えたためだが、拇印が通用するような相手ではあるまい。 「さてどうしょう」 朝の8:30である。ハンコといえば文房具屋だがもちろん開いていない。コンビニはそこらにあるだろうがハンコは見たためしはないし。この時間にあるのは車の免許試験場周りくらいだろう。現地で待たせている人を考えると、ボケるのも命がけではある。 ひとつだけ方法があった。自分のおじさんが歩いて20分くらいに住んでいる。たまたま、今回の業務に従事する前に正月の挨拶を兼ねて訪ねていた。だが、こんな時間にこんな要求である。20代ならまだしも30代半ば、ヘタをすると40に手が届きそうなオトコが言っていいものだろうか?しかし、警察からの嫌みを考えると、自然とおじさんの番号を探っていた。 「トゥルルルー、トゥルルルー、ガチャ、はいもしもしぃ」 意外に早く出てきた。 「あ、どうもぉ、東京のKですが、おじさんですか?」 「なんだ、こっちにきてるのかい?」 「ええ、まぁ来ているんですけど、別にそちらに遊びに来たわけではないんです。ちょっと仕事で三文判が必要なんですけど貸してくれませんか?」 「三文判?」 「何でもいいんです、貸してくれるなら今からそちらにすぐ向かいます」 「ああ、いいよ」 「じゃあ伺います」 実のところ、他に寄りどころもないので、会話しながらも早歩きで向かっていた。川を渡って川沿いにいくと一つ目の信号を右折、ほとんど坂を登りきった辺りで左折すればいい。前は道を確認しながら少し大回りしている。感覚では5〜6分は早い。 ”ピンポーン” 「よくきたね、ま、おあがりなさい」 急いでいるのがわからないのだろうか 「いやぁ、ボクは仕事中で」 「そうかい?ああ、ハンコだけどね3つあるんだけどどれにする?こっちは捺すとこんな感じ、ちょっと縁が欠けているんだ」 「あの〜っ、本当にどれでもいいんですけど、じゃあこれで」 縁の欠けたヤツを手にとり、懐に入れた。 「この間来てくれた時のことをかみさんに話したら、 "なんでバスで来れることを話さなかったの?"って怒られてさ、わるかったねぇ」 「いやぁ、歩いたって20分のことだし、大したことないですから」 「さっき出かけたばかりだから、急げばバス停にいるかもしれない、ぜひ寄ってみてよ、喜ぶよ」 優しい性格なんである。我が家では癒やし系として認識されている方なんである。今日も不在のおばさんはチャキチャキして割とオトコっぽい性格だが、こんな感じでうまくいっているのだろう。 「時間がないから、おばさんとは今度だな」 家を出てから、警察署に急いでかえす。思った通り、許可証はスムーズに出てコトなきを得た。おじさんに感謝しながら、 「今度も菓子折り持参でいかないとマズいかな、いつ返せるかな?」と考えながら現場へ向かった。(第2話へ続く) |
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作:shun | |
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