「発症1」

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 その日もいつものようにゴロゴロしていた。一週間前にちょっと熱を出して以来のことだ。幸いにして熱は処方された薬が効いてすぐに下ったのだが、それ以来からだのダルさを訴えていた。それでも食欲はそれなりにあったのだが、今日は昼から何も食べようとはしなかった。夕方になって熱が出て寝込み、明日は総合病院にでも連れていくしかないなと考えていた。そんな大事になるとは思いもしないのだ。熱と同時に顔がむくんできたのは、なんとなく気になったが、おたふく風邪をやっていないはずだったので、そんなものだろうと考えていた。朝になって子供の着替えを手伝いながら、
「なあ、どこの病院行けばいい?」
「この辺だと、K病院かN総合病院だけど、どっちでもいいわよ」
「たしか、前にN総合病院はかかっていなかったっけ?」
「ん〜っ、ちょっとかかったけどよく覚えてない。どっちが近いかなぁ?」
「どうも距離的にも経路的にもK病院がアプローチしやすいようだな、でも車で行くには道が狭いんだよな」
ふと、触っている足が妙に太いように感じた。
「何か気になるの?」
「・・・いや、でもN総合病院に行くよ。車で行って駐車場が込んでいても困るからタクシーにする」
道は空いていた。ただし、タバコの臭いが残る車内には閉口した。体調の悪い子供を乗せる車ではない。タバコの臭いがしないタクシーなど、ほとんどないということに気付いたのは最近のことだ。子供も妙に黙っている。もともとおしゃべりではないが、自分の変化に気付いているようだ。
休日専用の入口をくぐると、何人かの待ち人がいる。受付を済まし、ベンチに腰掛け順番を待つ。起きたときよりもむくみはよけいにひどくなったようだ。いつもはほっそりとして眼もぱっちりだが、今では七福神に入れそうな、眠そうな顔になっている。
担当してくれた医者は40前後でまだ若かった。ひとしきり状況説明をして、触診してもらうと、
「風邪の症状も見られますが、むくみの原因とは限りません。ちょっと尿と血液の検査をしたいのですが・・・」
「ええ、わかりました」
「これに尿をとってきてください。終わったらまたここに来てください」
突き当たりのトイレを利用したが、尿の少なさと色の濃さに驚いた。妙に赤く、まるでウイスキーみたいだ。その日の第一尿としてもこれは異常だ。
戻って尿を渡すと、今度は血液検査だ。やはり恐がって小さく悲鳴をあげる。
「おとうさん、すみませんがちょっと席をはずしてもらえますか?」
待合にいると、泣きじゃくった顔で帰ってきた。
「大丈夫か?」
「・・・」言葉はでなかったが、首は縦にふられた。
しばらくして、再び診察室で説明を受ける。
(Page.2へ続く)

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