「なぜ、あなたは怒るのか」

 仕事柄、いろいろな人と出会うことになる。もちろん、迷惑をかけているのはこちらであるが、公のために代理で仕事をしているのである。「お互いさま」という言葉がある。どんな立場の人でも、他人やモノに迷惑をかけたりかけられたりしていることを察した、先人たちの智恵から生まれた言葉だと思う。もちろん、ほとんど人と接しない仕事ならば、そんなこと気にしないのかもしれないが、接客を主体とする人から最近、ひどく怒られた。

ことの顛末はこうである。

 繁華街に近い道路上で小規模な工事をすることになり、事前に商工会に業務説明をし、現場前のビル店舗・オーナーにも説明・連絡をしていた。しかし、工事当日の昼頃、オーナーが飛んでくる。音がうるさいので、店舗のかき入れ時である昼頃は、工事を止められないかというのである。
「作業員も昼休みを取るので、昼頃はもちろん、工事はしませんよ・・・」
といったところでいきなり、
「なんだ、その態度は!こちらはクレームを言いに来ているんだ、まず謝れ!!」
というのである。
まあ、確かにヘルメットはかけっぱなしだったが、向こうはこちらを認識していたので、いいとは思っていたのだ。でも、向こうの言い分を聞いて、こちらの回答を言いかけた瞬間にそれはないだろう。
続いてでてきた言葉は次のとおりである。
「大体、今はお役所だからって、でかい態度でいていいなんてことはないんだよ」
「あんた、何歳だ。○○歳?なんだそんな歳になって、こんなことも知らないのか?
まず謝ればなぁ、相手はそれ以上怒ることはないんだよ!」
「○○歳って、俺の子供より下じゃないか。なんだ、まだ納得していないカオだな」
・・・・人のことをバカにしている。大体、挨拶時に名刺を渡しているのに、相手が何者かをわかっていないで一方的に思い込みで話している。相手が長身だということもあって、こっちは必然的に見上げることになるのだが、それも剣幕に拍車がかかった原因かもしれぬ。それに自分の子供との年齢差など、だからなんだというのだ?

そこで、自分が役人ではないことを一応、伝えると、
「あんた、役人じゃないのか・・・ じゃあ、なおさらだよ!」
ときたもんだ。
要するに、自分が間違ったとしても謝らないし、自分の気分が癒えれば、他はどうでもいいらしい。自分勝手なのだ。ついでに、みんなが言えないことを自分が言ってやるのが正義だと勘違いしているらしい、ギャラリーも多かったしなぁ。
こっちが一応、何度も謝ってみると、最後には
「わかればいいんだよ こういうことを教えるのも自分たちの役割だから」
などといいやがりながら、こっちの肩に手をかけてきやがる。馴れ馴れしいんだよ!

かつて、こういう揉め事がいやで、この業界を一度やめたのだが、どこに行ってもこういうヤカラはいるようだ。

困ったことに自分の親戚にもそういう態度を取るおじさんがいて、つい最近も、自身の入院先で、見舞いに行った自分の前で看護師にやっちゃったのだが、その後の自分の立場ったらなかったな。もっとも、実家にその話をしたら、同情される前に、
「そりゃ、あの人ならそういうことになるだろ」
と笑いのタネになってしまった。

さて、なんでこんな思い出すのもいやなことを書いているのか、
こういうことには原理があるようである。正に相手が言っていた
「謝れば、相手は多少なりとも落ち着く」
ということである。

確かに、自分は納得していなかったし、自分だけの正義で畳みかけてくる奴が大キライなので、それがカオにでていたのは確かである。しかし、一方、そんなカオにさせたのは当のクレーマー自身だということはわかっていないのだ。

誰だって、自分が多少なりとも迷惑をかけているとわかっているならば、クレームがきたら申し訳ない気分になるのだから、やんわりと文句言ってもらうだけで効果は十分なのである。そうしたら、こっちも素直に
「申し訳ありません」
と、すぐ言えただろう。
それを自分の気分次第で高圧的に攻めてくるから、こっちも態度が自然に硬化するのである。

逆に、とっても腰の低い発注者もいて、そういう人がちょっと無理難題を突きつけてきても、
「まぁ、しょうがないですね。なんとかしますよ」
となってしまう。すべて計算づくでの態度ならコワイが、わるい気はしないものだ。

しかし、これは自分が常に責められる立場にいるからそうなるだけで、例えば家庭などで子供に対してはできているのかというと、はなはだ自信はない。やはり、自分のこと、相手のことを思いやって、ちょっとソフトに対応しようと思う。お互い様、お互い様。

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作:shun

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