| 「死を乗り越えて」 |
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| 飼っていたハムスターが死んだ、実にあっけなく。異変に気付いたのは前日の夜のことだ。家人からの話では、ゲージのそこらに血がついており、元気がなく眠っているとのことだ。自分も初めて飼ったものであるため、知識がない。すぐに考えたのは体が小さいから、「食べさせないとヤバイ」ということと、この季節から「水を飲まないとヤバイ」ということだった。もう少し早くに気付いていれば、その時点で獣医に連絡することも考えられたが、すでに22:30を過ぎている。行きつけがあるわけでもなく、できることをして、明日獣医に見せようということになった。飼い主であるわが子は、そんな事態を知るよしもなくベッドにいる。明日といっても仕事にアナを空けるわけにもいかず、学校もある。とりあえず朝一で調べ上げた獣医に連絡し、対処方法を教えてもらい、病院へ行くしかない。 翌朝、出勤後すぐに調べはじめたのだが、「ハムスターを取扱う」としている病院はいくらもいるにも関わらず、その専門家は非常に少ないということに気がついた。電話に対しても、ぞんざいな口のききかたをする者もいれば、せめて「専門家の情報」をたずねてみても、かんばしい結果は得られない。また、ほとんどの病院は「予約制」であることもネックである。ペットショップにも聞いてみたが、担当地区のことしかわからず、それも「ハムスター」となるとやはりその情報は少ない。「ハムスター」にように取扱う数がおそらくハンパなく多いにもかかわらず、情報が少ないということは・・・いやな予感がする。結局、自分で適当な病院をPCなりで調べ、電話し、その対応等から良い病院を見極めるしかないようだ。 「げっ歯類」の専門家のところがたまたま、近かったのだが、電話がつながらず断念。結局、ホームページ上で「イヌ・ネコ・ハムスター」というどこでも取扱っている動物以外に、「は虫類ほか小動物」も取扱い、営業時間も比較的遅く、飛び込みも対応する病院にお願いすることにした。とりあえずの対処方法は「体温が低くならないように」ということだった。一足早く帰宅できる家人にその旨伝え、夜連れていくことになった。 診察には飼い主も同行し、問診票も自分で書いていた。当たり前だが、なんとなくほっとした。日頃、他のことにかまけていささか放置気味ではあったが、気にはなっているということだ。診察してもらい、出血は肛門からということで、体温が下がると余計に悪くなるらしい。何しろ体力をつけること、そのためにシロップで栄養をとり、抗生剤で病気に抵抗するという説明を受けた。もちろん飲ませ方も教えてもらった。体温が下げないためには、靴下に米を入れて、電子レンジで温めたものをゲージに入れてやるということだった。素人ではなかなか考えつかないものなので、妙に感心した。 「昨日来てもらえればもっとよかった」ということだったが、こちらも病院を知らなかったし、遅すぎて先生もいなかったかもしれない。ただ、いる場合には夜間でも診察オーケーということなので安心した。 帰って、さっそく教えられたとおりにやってみた。体力がないのか、あまり飲んでくれなかったのだが、とりあえずやるべきことはやった。冬場に使っていたヒーターも併用したし、靴下も入れた。ただ、相手はなぜか陶器製の巣箱に入ってしまっている。周りの声や明かりが体に「さわる」のかもしれないと思って、とりあえずそのままにした。 **************************************** 翌朝は、いつもより早く起きた。昨夜と同じように巣箱の中にいる。あんまりそのままなので、そっと出して触れてみた・・・。 あっけないものである。数年前に猫を病気でなくしたとき以来、自然に静かに目がうるんだ。家人も子供も顔をあげられなかった。朝の、いつも忙しい時間に、静かな空間がそこにあった・・・・ **************************************** あれから、もう一週間になる。「彼」は土に還っていったが、玄関のゲージはそのままだ。整理する時間もなかったのだが、できなかったということもある。これまで、玄関を開けると、けっしていいにおいではない「彼」独特のにおいと、 「あぁ、おかえり。ねぇ、いっしょにあそぼうよ」といいたげに、ゲージにかじりついている姿・音が当たり前だったのに、今はない。でも、そっとつぶやいてみる 「ただいま」 この週末、これをどうするかという話になるだろう。思えば、渋る家人に構わず、「ちょっと乗り気」程度だった、ゲームばかりやっている子供にすべてを委ねたのは自分だった。いずれやってきたであろう「別れ」は予想外に早かったが、これを受け止め、どう乗り越えて、そして次にどうするか、静かにきいてみたいと思う。 |
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作:shun | |
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