「リアル」

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 見学後、遅い昼食をとるために階下に降りたのだが、入り口近くには小さいけれど動く草食恐竜の像が2体あった。そして中央ホールには巨大な動く肉食恐竜の像があった。周りは黒山の人だかりであり、多くの人がビデオカメラをまわしていた。私も魅せられた。昔では到底考えられないようなものが、獲物に襲い掛かるような結構リアルな動きを見せているのである。しかし、ひとしきりの感動の後にその目は妙に恐く作られていように思われた。首を前後左右にいい感じで振り回し、動きの不自然さもほとんどないが、リアリティーに凝り過ぎてかえってリアリティーがなくなったような感じがした。事実、子供たちは恐怖を感じることもなく触れられるほどの距離まで近づいているではないか。いまやその恐竜は恐いものでもなければリアルでもなく、こっけいな想像上の怪物でしかなかった。模型は真のリアリティーを生み出さない。どんなに精巧に作成してもそこには作成者の意志が感じられ、そしてその中には肉や骨で満たされていない空虚が存在しているのだ。私はきびすをかえし、満たされない己の空虚を抱いたまま建物を後にした。後ろで恐竜はなおもこっけいな仕草を繰り返し、おいでおいでと耳打ちしてくるのを感じた。

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作:shun

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