「休日の一コマ」

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そろそろ潮時だ。刻限がせまっている。彼はせきたてるようにその場を後にし、街道へ向かう。街道のバイク屋の前を彼女はぶらついていた。そのスタイルは少し前にはやったレトロ調のスクーターがぴったりはまるものであった。事実、店頭には新旧のスクーターが並んでいる。
「おなかすいた」
「ああ、そうだね。かえったらごはん作ろう」
そんな彼らの傍らをすらりとした濃紺のジーンズ姿が通り過ぎる。対照的に白く涼やかでやわらかい横顔の口元にはかすかな微笑みが浮かんでいた。シートをガムテープで補強した古びたオフロード車をちらっと見ながらそのうしろすがたはコンビニへと吸い込まれた。
 街道の車の流れを見計らって彼は反対側へと渡った。角にあるガソリンスタンドで、後ろ髪をひかれるように振り返り、あのバイクの横に立つあざやかな濃紺に吸い寄せられた。
「もうかえろうよ」
彼は小さくうなづき、小さな短パン姿を強く強く抱きしめた。
家に帰り着き、予定どおりに寝付いた短パン姿を確認して、彼はまた家を出た。
 数分前まであったはずのそのやや寂しげな後ろ姿はもはや見られなかった。傍らの歩道橋からはいつまでも続く車とバイクのウェーブがよく見える。バイク屋から出てきた従業員が周りを見回している。せまりくる夕闇の兆しに少しも気づかないまま彼はいつまでも眺めていた。

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作:shun

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