| 「さよならホームベース」 | <おすすめBGM>Gettin' High/by Ian Brown in GOLDEN GREATS |
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| もう中継していては間に合わないところまできていた、そう思った瞬間休んでいた身体の筋肉が踊る感じがした。僕は大きく振りかぶり藤巻の洗練されたフォームとはまたちがう僕の投げ方でこんしんの力を込めてボールを放った。ランナーは頭から滑り込む体制に入ろうとしていた。ボールは球威を増しぐんぐん伸びる。グラブを構える藤巻をかすめホームへと進む。ランナーが滑り込む。と同時にキャッチャーもボールをキャッチしたはずだ。土煙りが舞い、静寂があたりをつつむ。一瞬時間が止まったかと思うほど長い間に感じた。次の瞬間、ジャッジは下った。審判はセーフの声とジェスチャーを相手チームの歓声がこだまする。僕等は負けた。そして廃部になった。そして賭けには勝った。 その一週間後、号外と称し妙な新聞がばらまかれた。「廃部を賭けた試合の裏の真相」と題された見出しの中には、あの試合は藤巻の他校へのひき抜きを正当化するためのものであって、理事長からもちかけた話しであったと書かれていた。そしてその証拠にこの試合で賭けが行われ、負けるほうに賭けていたものに藤巻と僕、そして蒲田の3人の名前が挙がっていた。一同は顧問に呼び出され事実関係を問われたが、口のうまい蒲田のおかげでなんなくすり抜けることができた。その帰りすがら、蒲田から号外は中村の仕業だと聞かされる。蒲田と中村はいつもつるんでいたので、今回の話しも当然かんでいると思い込んでいた僕には以外だった。そして蒲田は最終回のホームへの送球がなかったら、八百長とバレていたかもしれない事を付け加え、肩があんなに良かったなんて知らなかったと言った。藤巻が何か言おうとしたが、僕はそれをさえぎって、「藤巻は知っていたさ、その証拠にバックホームって叫んだんだ」と言った。河川敷きにあるいつものグランドにさしかかったとき、蒲田の提案でなにか思いでに残そうということなった。野球部は廃部だし、藤巻は来月名門野球部に転校していく。そのことを気づかってのことだろう。そんな大げさなことじゃないと思いながらも、グランドにおりると少しばかりの寂しさを覚えた。片付け忘れたホームベースに僕等は指でさよならとかいて踏み消した。 藤巻は転校していった。蒲田は相変わらずふざけた調子で、僕はというとそれ以来野球をやらなくなった。 |
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ご意見、ご感想はこちらへ!! 作:Grecoviche |
・原案:吉井憲一 | |